令和4年度成果発表会
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864200468)s/m(速風るよに計速風向風型車風■吹雪・着雪等の災害対策や研究に必要な風の観測は、風向風速計自体の着雪・凍結により正確に実施できない場合がしばしばある■従来からの風車型と対策を施した超音波式の風向風速計の比較■対策を施した超音波式風向風速計は厳冬期にも良好に稼働する2019.○○.○○○○○○○○○○○○○12102超音波風向風速計による風速(m/s)2023.2.21令和4年度成果発表会11月12月8.20.0風車型超音波式0.80.01月12.40.02月3月7.10.01.70.0図2021年1月における2種類の風向風速計の毎正時の風速値の比較。○印:2種類の風向風速計の風速値が一致(A群)。×印:風車型風向風速計が測定停止(B群)。△印:風車型風向風速計が測定停止しないが風速値が明らかに低い(C群)。4月0.90.01210風は最も基本的な気象要素の一つであり、全国各地の気象台やアメダス観測点等において広く定常的な観測が行われている。極端な強風は、建物等の倒壊・破損や鉄道・航空機の運行停止等の被害や社会的影響をもたらすため、風の正確な観測・記録は防災の観点からも重要である。積雪寒冷地域における強風は、吹雪や着雪の災害も引き起こす。ところが、積雪寒冷地域では風向風速計自体に着雪や凍結が発生して、風の観測が停止してしまう事が解決すべき課題となっていた。当研究所ではこのような課題を克服するために、雪氷防災実験棟における人工的な低温・風雪環境の下で、ヒーターを用いた対策を施した水平2成分超音波式風向風速計の稼働試験を測器製作会社との共同研究として行った後に、2019/20年冬期からの3冬期にわたり雪氷防災研究センター(新庄)の気象観測露場において従来型の風車型風向風速計との比較観測を実施した。風車型風向風速計は可動部があるためにヒーター等の対策を施しづらいのに対し、超音波式風向風速計は可動部がないために対策が比較的容易という特徴がある。表に、2種類の風向風速計の測定停止率の3冬期の月別平均値をまとめた。降雪・低温により着雪・凍結が発生しやすくなる1月に風車型の平均停止率は最大値の12.4%に達した。一方、対策を施した超音波式は3冬期を通じ測定が停止する事はなかった。この比較観測から、多雪・低温の厳冬期に風車型風向風速計が正常に測定する割合はかなり低下する一方で、対策を施した超音波式風向風速計は良好に稼働する事が分かった。雪氷防災研究センター(新庄)は、同センター(長岡)に続き、世界気象機関(WMO)の全球雪氷圏監視計画(Global Cryosphere Watch)の日本における数少ない観測地点として登録手続き中であり、風を含む冬期気象観測の精度・信頼性の向上を図ってゆく。風車型風向風速計の測定停止率が観測期間中最も高かったのは2021年1月であり、22.3%に及んだ。この月の2種類の風向風速計の毎正時の風速測定値の比較を図に示す。データは、両者が一致するもの(A群)、風車型が測定停止となったもの(B群)に加え、風車型が測定停止しないものの超音波式に比べ明らかに低い値をとったもの(C群)があり27.4%の割合を占めたことが判明した。C群の発生は、風車型のプロペラへの着雪やその軸の周囲への氷の発生等によりプロペラの回転が停止しないまでも阻害されたためと考えられる。この月において風車型により正しく測定できた割合は約半分であった事が分かった。表2種類の風向風速計の測定停止率(%)の3冬期における月別平均値。A群C群B群ことが判明観測を3冬期にわたり実施積雪寒冷地域における風観測の課題と対策~風車型と超音波式の風向風速計の比較観測から~雪氷防災研究部門小杉健二

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