令和4年度成果発表会
167/210

■交通障害状況、レーダー降雪強度分布、降雪粒子を比較解析■主に雪片からなる空間的に集中した強い降雪が継続■車輌スタック直前には降雪の高さと強さの増加が見られた2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会この研究は、交通障害状況、3次元のレーダー降雪強度分布、降雪粒子の変化を比較解析した、おそらくは初めての試みです。2021年12月24日から28日にかけて関越道で大型車走行不能(スタック, stuck)による車線閉鎖が発生し、東日本高速道路(株)始め関係者の連携による対処により車両スタックが約3時間で解消されました。このときの降雪について解析しました。解析結果のうち車両スタック発生に至る時刻の降雪について、図に示します。降水量分布(図右上)では、積算降水量、降雪強度の何れにおいても糸魚川~上越~魚沼にかけて集中した降雪域が明瞭に現れていました。当日は12月26日15時からIC計画閉鎖が行われており、閉鎖以前に比べて、閉鎖後の降雪が新潟県内において強まっていました。この降雪は、越後湯沢において実施した観測から、主として雪片によるものであったことがわかっています(図左上)。車輌スタック発生後は霰(あられ)を主体とした降雪に変わり、降雪強度の減少が見られ、交通障害対応に有利な降雪状況となっていた可能性があります。関越道近辺において求めた降雪強度の鉛直分布からは、内陸の関越道およびその風上側において、車輌スタック直前に降雪の高さ降雪の強化が内陸で起きていた理由、及び主たる降雪粒子との関係について調査が必要と考えられ、解決すべき課題として、1)降雪の高さの増加→氷晶核(降雪粒子の種)の増加→多量の雪片、という仮説はこの事例に当てはまるか?2)それは降雪の空間的集中と降雪過程として関係するか?3)それは交通障害のリスクに対して有用な情報になるか?(雪雲の中で降雪粒子がある領域の上端)と強さの増加が見られました(図左下)。雪雲は海面から熱と水蒸気の供給を受けて発達し、上陸後は衰弱に向かうのが通常ですが、上昇流を作る要因があるとさらに発達することがあります。雪雲の上陸から50km以上内陸でのこのような発達は、風上から移動してくる水平収束場(風のぶつかり)や山岳の影響が原因として考えられます。これらは、集中降雪につながる降雪過程として解明すべき点です。が挙げられます。使用したデータは複数レーダーを合成した降水強度のみのプロダクトです。今回は1点の地上降雪粒子観測を参照して解析しましたが、地点観測がその近傍の全領域を代表するわけではありません。今後、両者をつなぐため個別レーダーのデータを比較解析に加え、集中降雪状況の解明に加えて、合成プロダクトデータの有用性と限界についても調べる方向です。雪氷防災研究部門中井専人・本吉弘岐・上石勲・中村一樹交通障害をもたらした集中降雪の解析

元のページ  ../index.html#167

このブックを見る