令和4年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会図1:想定している災害の影響残存期間と、今年度の研究で分析の対象とした期間経済的な影響の面からみると、災害は一時的なイベントではなく、かなりの長期にわたり影響を及ぼしうるものであることが知られています。但し、どのような場合に長期的な負の影響が残るのか、逆にどういう場合に災害が経済成長につながるのか、その間どのような変化が積み重なっているのか、といったことはまだ明らかではありません。そこで、災害の長期的な影響の背後にある因果メカニズムの解明を目指し、地道に因果推論を積み重ねています。ひとつには、グローバルサプライチェーンの一端を担っている数千の生産者(被災地内外)を対象に調査を行い、生産設備に対する物理的被害や取引先が被災したことによる取引途絶が生産戦略(取引関係や経営の多角化等)に与える影響を統計分析により検証しています。社会経済的な変化は、多くの場合非実験的な状況であるために、前後の時点の単純比較では観察されない変数による推計バイアスのリスクがあります。そのため因果関係を捉えるには特別な配慮が必要となります。本研究ではそうした配慮を行うために開発された統計分析手法を用いながら、分析を行っています。また、確認された生産活動の変化の背後にあるメカニズムを、心理面の変化や販売環境の変化を捉えるデータを用いながら、議論しました。また、よりマクロに、地域毎の人口等の空間分布の時系列変化の考察や、復旧にかかる時間と人口や地域経済の回復の関係の予備的分析を行いました。こうした研究から、復興過程の違いが被災地経済に与える影響を実証する試みを行っています。昨今政府により推進されているEBPMを復興政策においても行うためにはまずエビデンスを蓄積する必要があります。過去の災害事例をもとに災害の社会経済的影響の傾向とその後の復興過程の解明を行っていきます。引き続き復興ステージを一元把握するためのデータ開発も行います。さらに、部門の枠を超えた学際的共同研究により、実質的な復旧期から再生期への移行等、各地が各時点において復興のどのステージにいるのかを把握するためのデータ開発も行っています。これまでは広範囲の情報を欲している場合にそうした情報の収集コストが非常に高く、容易に手に入る指標では実際復興関連工事がひと段落するよりも早い段階で復興したように見えてしまったり、逆にいつまでも主要な復旧工事が続いているように見えてしまうこともあるという問題がありました。全国に張り巡らされた地震観測網を活用することで、この課題を克服できないか検証を行っています。■地震観測網を用いた復興過程の遠隔把握技術の開発■復興過程の違いが被災地経済に与える影響の検証■災害によるサプライチェーン途絶とその後の影響の計量経済分析データでみる経済社会の復興過程所属名災害過程研究部門氏名柏木柚香

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