■発電施設の配管系を対象とし、地震時の非弾性挙動を再現できる■令和4年度にはE-ディフェンスを用いた検証実験を実施し、配管系2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会図1加振試験において試験体が損傷したときの様子本研究は、文部科学省原子力システム研究開発事業「地震荷重を受ける配管系の非弾性を考慮した高精度シミュレーションモデルの構築」で実施しているものです。(R02~R04年度、研究代表者:中村いずみ(防災科研)、研究分担者:澁谷忠弘(横浜国大))脱炭素社会の実現やエネルギー不足への対応の一つとして次世代原子力システムの開発が挙げられますが、日本は地震国であり、新技術を社会実装する際には高度な耐震信頼性が求められます。既存の構造物では実地震による被害の経験や多数の実験・解析を通じて設計に必要な知見が蓄積されていますが、新しく開発される構造物に対してはそのような知見が不足するため、最新の計算科学を取り入れた設計が期待されます。現在の原子力発電施設では、弾性解析に基づく耐震設計(弾性設計)がされています。弾性解析では保守的な評価が可能という利点がある一方、現実世界の応答で現れる、摩擦や弾塑性変形などのさまざまな非弾性挙動を正確に再現するという点では十分ではありません。近年では設計の想定を超えた条件(Beyond Design Basis Event、いわゆるBDBE)に対する配慮が求められるようになっており、従来の設計で考えていた弾性域を大きく超えた、終局挙動も含めた非弾性挙動の適切な評価の重要性が認識されてきています。解析に基づきこのような評価を実現するためには、実現象と比較検証して妥当性を確認した解析モデルを構築する必要がありますが、構造物の損傷に至るまでの試験データは極めて限られており、信頼性のある解析モデル構築の障害となっている状況です。本研究では、加振試験に加え配管継手の詳細な形状計測や材料強度試験も実施しました。また、解析では損傷メカニズムを考慮した材料モデルの導入を進めています。今後は実測データをもとに解析モデルの精度検証を行い、解析結果に影響の大きい因子の抽出、影響程度の評価を進める予定です。また、検討の成果は、配管系を対象とした高精度な弾塑性地震応答解析手法としてまとる予定です。そこで、令和2年度より3ヶ年計画で、原子力発電施設の重要構造物の一つである配管系を対象とし、地震時の非弾性挙動を再現できるよう解析モデルの精緻化に取り組むこと、また、解析モデルの評価検証に必要となる終局挙動までのデータをE-ディフェンス実験で取得することを目的とした研究を開始しました。この配管系加振試験を、令和4年8月~9月にE-ディフェンスで実施しました。加振試験では、地震を模擬した入力波の大きさを段階的に上げて弾性域~弾塑性域までの応答特性、ひずみの蓄積過程などのデータを取得しました。その後、試験体の損傷を目的として正弦波による加振を行ったところ、加振中に試験体の一部でき裂が貫通し(図1)、損傷に至るまでの試験データを取得できました。高精度シミュレーションモデルの構築に取り組んでいます。の損傷までのデータを取得しました。加振試験による配管系終局挙動の取得地震減災実験研究部門中村いずみ
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