■衛星、航空機、ドローンを活用して被害を早期に把握■AIにより高速、高精度に被害を抽出■推定した被害状況を災害の早期復旧に活用2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会災害発生後、救援や復旧に向けた対策を行うためには、被害状況をできるだけ早く把握することが必要です。地震を例にすると約10分で震度分布などの推定結果が公開されます。一方、実際の被害が生じているかを確認するためには衛星、航空機、ドローンなどを使って上空から観察することが効果的です。これにより被害が集中している場所がわかり、復旧に向けた各種対策を考える上で有効です。上空からの観察には様々な手段があります。例えば衛星は、広域かつ周期的な観測を得意とします。中でもSAR衛星を使用する事で夜間や悪天候であっても観測可能であり、光学衛星を使用することで専門知識がなくても容易に解釈することができます。これらの画像の一部はインターネットで公開されており利用しやすくなっています。また、商用の光学衛星のなかには建物1棟毎の被害把握が可能な高解像度の製品もあります。また、航空機(固定翼、ヘリコプター)やドローンを使用すればより詳細な観察が可能になります。一般的に、飛行高度や搭載しているカメラの性能に応じて高解像度な画像を撮影可能です。本研究では、これまで災害直後に衛星、航空機、ドローンによって撮影された画像を用いて、建物被害の教師データを作成しました。まず目視により建物被害を無被害/損傷/倒壊の3段階に区分し、画像と対応付けました。この区分では、無被害は被害を確認できないことを表します。損傷は屋根や壁の被害やブルーシートが確認できることを表し、公的な支援金の対象にほぼ相当します。倒壊は建物が大きく傾いていたり、崩壊していることから人的被害につながる危険性があることを表します。これまで衛星、航空機、ドローンの画像を使用して、合計30万個以上の教師データを作成しました。次に、各画像を建物が含まれるように小さく分割したデータを学習用:評価用:テスト用(比率は例えば7:1:2)に分割し、画像と被害区分の組み合わせをAIにより学習するモデルを作成しました。まず、多数の学習用データを用いて被害画像の特徴を学習します。次に、評価用データを用いて、正解である被害区分と予測結果との差が最小になるように最適化を繰り返し、多数の試行により誤差が収束したことを確認します。テスト用データを使用して学習したモデルの精度を検証した結果、全体的な被災程度をよく再現できており、被害3区分の正答率は7~8割程度となったことを確認しました。今後も様々な災害時の画像を収集し、教師データを拡充したりモデルを改良することにより精度向上を目指していきます。また、地震以外の災害や、インフラ被害等の把握が可能なモデルの開発を進めていきます。また、各機関と協力し、開発したモデルを災害対応において活用することを目指します。空から早く被害をとらえる~AIを用いた被害状況早期把握技術の開発~マルチハザードリスク評価研究部門内藤昌平
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