令和4年度成果発表会
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2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会津波.それは一般に,海底下で発生した地震によって生じた海底の隆起や沈降によってその上の海水が上下に変位することで生じ(発生),重力波として伝わり(伝播),沿岸に近付くに従い波高が増大し陸域に浸水(遡上)することで被害をもたらす自然災害として知られています.沿岸に居て強い揺れを感じたら津波に備えて避難することが出来ます.しかし,地震を伴わない津波も多く知られています(非地震性津波).例えば,晴天で凪いでいる海に突如として津波が発生する現象が世界中で確認されており,日本でも九州地方で古くからあびきとしてしられており,漁船を転覆させる等の被害が生じています.あびきは一般的に気象津波(meteotsunami)と分類されます.その他に,『島原大変肥後迷惑』として知られている雲仙岳の眉山の山体崩壊によって土砂が有明海に貫入することで津波が発生し,対岸の肥後で被害が生じたことも歴史の中では知られています.さらに,2022年1月のトンガ諸島近海の海底火山噴火でも噴火によって生じた気圧波が津波を引き起こし,想定よりも早い津波の到達が確認されました.加えて,海底での地すべりや海域への隕石の衝突によっても津波は発生し得ます.海底の地震や地すべりによる津波は,海底地形の変化によって生じるもので,先行研究が多数あります.一方,土石流の流入や気圧変化,隕石衝突による津波は,海面を直接変動させて発生します.これらの発生メカニズムや観測との比較,室内実験はまだまだ不十分で,その事象の発生が予見されても津波を適切に予測する術がなく,調査研究が必要とされています.このような津波に備えるため,その基礎となる沿岸の地形データを世界中の任意の地点で作成するシステムの開発を進めています.そして,オープンソースの津波計算プログラムであるJAGURSと合わせることでどこでも津波計算が可能となり,津波防災力の向上に資する研究開発を進めています.我が国は四方を海に囲まれ海の恵みを受けつつも,津波による被害にも繰り返し見舞われてきました.津波の発生と伝播や沿岸の構造物等に与える影響などを対象に学際的な研究が活発に行われ,“TSUNAMI”は世界標準語として用いられています.今後は,非地震性津波も含めた総合的な“TSUNAMI”研究によって想定外を無くすための研究活動を進めて行きます.これらの非地震性津波はその発生場所が特定されていません.実現したいこと■想定外をなくしたい■津波防災力を向上させたい■津波の発生・伝播・遡上の仕組みを解き明かしたい謝辞本研究はJSPS科研費JP18K04674, JP19H02409, JP20HP8014, JP21HP8018, JP21K21353, JP22HP8018及び公益財団法人日立財団の倉田奨励金(奨励金No.1400)の助成を受けて実施しています.記して感謝致します.津波は地震で起きる?!地震津波防災研究部門近貞(山本)直孝

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