令和4年度成果発表会
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■確率論的な火砕流ハザードマップの有用性を検証し、具体的な■ハザードマップ有用性の検証作業により効果的な情報提供を目2019.○○.○○○○○○○○○○○○○2023.2.21令和4年度成果発表会火砕流の非確率論的ハザードマップ(左)と確率論的ハザードマップ(右)を比較した曝露評価(上)とリスク評価(下)の結果。現在国内の火山地域における火山防災対策は火山ハザードマップを基礎データにして進められています。国内の火山ハザードマップには予想される噴火ハザードの到達範囲が示されていますが、到達しやすい場所と到達しにくい場所が混在しているため、対策の優先順位に係る判断が難しくなっていることが考えられます。ここでハザードの到達しやすさ(到達確率値)の高低が示されれば、人命への危険性がより高い箇所での対策を優先的にする等の判断が可能になります。今年度は、2つの火砕流ハザードマップを比較することによって確率論的なハザードマップの有効性を検証しました。1つは想定最大噴火規模のみの火砕流シミュレーションから得られた非確率論的なハザードマップです。もう1つは様々な噴火規模を想定した火砕流シミュレーションと噴火の経験的規模別頻度分布(べき乗則)を組み合わせて得られた到達確率値を含む確率論的なハザードマップ(志水・田邊,2022)です。火砕流が発生した場合の周辺地域への危険性がどの程度であるかをそれぞれのハザードマップについて評価しました。周辺地域の火砕流による危険性評価は、ハザード到達範囲確率論的ハザードマップを得るには多くの知見が必要です。噴火口に関する情報もその一つです。噴火口がどこに形成されるかによって火山ハザードによる影響範囲が大きく変わってくるためです。噴火口位置を評価するためには地質調査の成果や火山観測によって推定される現在の火山活動に関する情報など多くの知見が必要となります。噴火口に関する情報と高度なシミュレーション技術を合わせることにより、あらゆる噴火ケースを想定した確率論的なハザードマップを作成でき、それによって事前対策の判断がしやすくなると期待されます。またハザードマップは多様な目的に沿って作成されることが望ましいのですが、それらの開発と同時にハザードマップの有用性を併せて調べていくことも、より実用的な情報の提供のために欠かせないと考えます。内にある人や建物数を集計する「曝露評価」およびハザード到達確率値とその領域に含まれる(曝露している)人や建物数とを乗算してリスク値を算出する「リスク評価」により実施しました。確率論的ハザードマップを使った場合では、(1)危険性のより高い場所(到達確率値が高い)が具体的にわかるため危険に曝されている対象に関する詳細な情報を抽出できる、(2) 火山噴火現象の基本的特徴(小規模噴火は高頻度で大規模噴火は低頻度で生じるという傾向)を相応に反映したリスク値を得られる、という評価結果が得られ、確率論的なハザードマップによってさらに具体的な対策に係る判断をしやすくなると考えます。判断に資する情報抽出が可能であることを確認しました指します確率論的な火砕流ハザードマップの有用性検証について火山防災研究部門河野裕希(共同研究者:志水宏行(火山研究推進センター)・田邊章洋(雪氷防災研究部門))

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