W測線プレートからの反射波2019.○○.○○○○○○○○○○○○○図1.人工地震源および観測点位置とスロー地震人工地震源を星で,観測点を赤円で示している。黄丸は気象庁一元化震源を元にして精密震源決定された深部低周波微動源(Ohta&Ide,2011)を示している。青色コンターは長期的スロースリップの最終すべり量(水藤&小澤,2009)を,黒色コンターはフィリピン海プレートの海洋性モホ面の等深度線(Shiomietal.,2008)を示している。矢印はプレート境界周辺からの明瞭な反射波群を示す。北南北南E測線図2.活発な深部低周波微動が観測されるプレート境界付近の構造イメージ層境界(黒実線,黒破線)は先行研究(例えば,Iidakaetal.,2003)の結果を参考にした。本研究で推定されたプレート境界周辺の反射面は,深部低周波微動源周辺で明瞭で,海洋性地殻の沈み込みによる脱水作用等によるプレート境界周辺の特徴的な構造(例えば,Katoetal.,2010)と関連している可能性がある。地震データは気象庁一元化震源要素を利用した。2023.2.21令和4年度成果発表会南海トラフ域のプレート境界で発生する巨大地震の震源域の更に深部延長周辺では、通常の地震とは異なる深部低周波微動(Obara,2002)が繰り返し発生していることが分かっております。深部低周波微動は、プレート境界で発生するゆっくりすべり現象に伴って発生しており、太平洋プレートにおける世界中の複数の巨大地震発生域で確認されています。また、プレート境界で発生する巨大地震との関連性が指摘されています(例えば,ObaraandKato,2016)。本研究では、東海地域において、巨大地震の震源域の深部延長周辺で発生する深部低周波微動の活動域に着目し、ダイナマイトによる人工地震を用いて、プレート境界周辺から反射してきた地震波から地下の反射構造を推定しました(図1)。この結果,深部低周波微動の活発活動域上にある探査測線(W測線)では、明瞭な反射波が観測されました。調査を進めると、この反射波はプレートの沈み込みに伴って発生する普通の地震よりもやや浅い領域で活動する深部低周波微動発生域周辺から反射してきていることが分かりました。これにより、深部低周波微動の活動域には、特徴的な反射構造があることが分かりました(図2)。東海地域周辺の先行研究(例えば、Katoetal.,2010)によると、活発な深部低周波微動がみられる領域のプレート境界周辺には、水の存在を示唆する領域が広がっており、今回推定された反射構造はこの領域にありました。一方で、深部低周波微動活動が弱まりつつある東端側に設置された探査測線(E測線)では、今回の人工地震で明瞭な反射波が観測されませんでした。プレート境界で発生する深部低周波微動の活動度の違いが顕著な反射構造の存在と関連しているかもしれません。南海トラフ域では、巨大地震が発生することに加えて、プレート境界でゆっくりすべる現象などがあることが分かっています。これらの現象について構造的な特徴を捉えることは、現象の理解を深めることに加え、地震発生サイクルを再現する際のシミュレーション研究の参考になることが考えられ、より確実度の高い地震発生予測研究に貢献します。地震津波防災研究部門上野友岳東海地域に沈み込むフィリピン海プレートの反射構造と深部低周波微動■東海地域における人工地震探査■沈み込み帯におけるプレート境界面の反射構造■深部低周波微動発生域の反射構造
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