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研究開発課題「斜面災害の発生機構に関する研究」に係る事後評価結果について

平成13年5月8日

1.はじめに

防災科学技術研究所は、平成9年8月7日に内閣総理大臣が決定した「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法のあり方についての大綱的指針」に基づき、同年12月17日、「防災科学技術研究所における研究開発等評価実施要領」を策定し、今後の研究開発課題等の評価を本要領に沿って行うこととした。
本要領においては、重点的資金による研究開発課題が終了した翌年度のできるだけ早い時期に外部の専門家等による事後評価を実施することとされている。
平成11年度に終了した、特別研究1課題が今回の対象となる。
なお、今回実施される研究開発課題の事後評価は、本要領策定後初めてである。

2.対象課題の概要

対象課題である特別研究「斜面災害の発生機構に関する研究」は、平成6年度より平成11年度まで6年間にわたって実施した。本研究の目的は、かつて雲仙眉山や磐梯山で発生したような大規模崩壊の発生機構と運動機構を明らかにすることにより、火山地域における治山、砂防事業など土砂災害防止のための国土保全事業の効率的推進や避難対策の推進に貢献するなど防災対策の高度化を図ることである。
本研究課題は3つの研究項目から構成されている。その第一は「大規模崩壊の発生場に関する研究」で、山形県白鷹火山を対象として各種の物理探査手法を用いて大規模崩壊発生の地形地質的特性と発生のメカニズムを解明しようとする研究である。二つめは「崩壊土砂の流動機構に関する研究」で、崩壊堆積物の現地調査および模擬物質を用いた実験によって、流下運動の相似則の導出を目指した。三番目は「ハザードマップの高度化に関する研究」で、当研究所が以前から取り組んできた地震時における斜面崩壊発生場の予測図作成の高度化や火山の傾斜分級図の作成手法に関する研究を進めるとともに、研究項目1と2の成果をハザードマップに取り入れるための研究開発を目指して実施した。
本研究は平成2年度から実施された科学技術振興調整費「火山地域における土砂災害発生予測手法の開発に関する国際共同研究(1990-1994)」の成果を受け、その第2期研究としても位置づけられるもので、調整費で対象にした磐梯山とはタイプの違う白鷹山を対象として防災科研が独自にプロジェクトを策定した。

3.評価の目的

今回の評価は、以下の各項目に対して、本研究開発がどこまでその目的を達成しているかを判断するものである。

  • 研究開発の達成度
  • 成功・不成功の原因の把握・分析
  • 研究計画の妥当性のレビュー
  • 研究開発成果の波及効果の把握・普及
  • 新たな課題への反映への検討

4.評価方法

研究開発課題外部評価委員会を設置・開催し、研究責任者が研究開発成果について説明を行い、質疑応答・議論を踏まえたのち委員長が全体をとりまとめ、報告書を所長に提出する。

5.評価結果

事後評価報告書
作成年月日:平成13年4月23日

評価の視点 評 価 結 果
[研究開発の達成度]
研究開発の方向性
研究目標の達成度
研究課題の独創性
総括的な課題であったが、内容・目標とも発生場と移動動態に限定し、ハザードマップの高度化及びその公表を成果の方向として目指したもので、妥当といえる。突発的災害への対応、対象地の状況などから十二分ではないが達成されている。独創性は年代測定資料採取に閉塞域にできた湖沼の湖底堆積物を利用、崩壊物質の移動メカニズムの模型実験に創意工夫のあとが見られる。
[原因の把握・分析]
サブテーマ設定の妥当性
アプローチの妥当性 
研究ポテンシャル
実施体制の妥当性
実験の類似性と異なる点の検討が不足している、サブテーマの幾つかが中途半端で、メリハリに欠けるなどの意見があるが、テーマ・アプローチに、問題が有るのではなく、問題は人員不足にあるという委員の一致した意見である。また、難しい白鷹火山を取り挙げたわりには良く検討されている。
[研究計画の妥当性]
年次計画の妥当性
資金規模の妥当性
6年の年次計画は妥当である。資金規模(2.57億円)は研究スタッフの人員に対して妥当といえる。人員不足が大きいので、資金を外部の人材の導入に使用出来ないか、また、研究チームの核となって研究推進する体制を構築できないか、という意見がある。
[波及効果の把握・分析]
成果の波及効果
成果の普及
既存の地すべり分布図のホームページが好評であることは、防災科研の研究に先見性の有ったことを裏付けている。今回の研究も効果の期待がある。全委員の意見はインターネットを活用し、傾斜分級図や白鷹火山の地形学図も積極的な公開普及を望んでいる。
[その他] 阪神大地震を除けば、人的被害を伴う災害のほとんどは斜面災害で、行政的には地域あるいは流域の危機管理上避けられない重い課題である。しかしこの研究は行政機関ではできない基礎を伴う研究であり、行政に偏りのない防災科学技術研究所でなければできない研究テーマで、研究の意義は大きいという大方の委員の意見である。
[総合評価]
A :優れている
B :普通である
C :劣っている
コメント 選定された課題は斜面災害研究の最重要課題の1つで、斜面の地学的性格、斜面破壊のメカニズム、引き金となる降雨・融雪特性、地下水の挙動、地震動特性、また、災害を受ける側の社会的側面など、それぞれ重要な課題を包括しており、一朝一夕に解明できる課題ではない。研究所において、将来長期にわたって取り組まなければならないテーマと言える。従って、あらかじめ長期的ヴィジョンと中期的ヴィジョンの大枠の設定が必要である。プロジェクトリーダーを欠いた今は聞くすべを持たないが、法人化した機会に改めて議論しておく必要がある。委員全員に共通した意見として、他省庁に関係する研究所と異なって、対処療法的研究でなく、基礎研究から応用まで取り組める研究所としてはあまりにも研究員の員数が少ないことを挙げている。また、研究成果の公表は、業績評価に直結する研究者への情報提供のみでなく、社会的評価も得るべく、義務教育のレベルの内容にかみくだいて一般社会や行政機関へ向け、インターネット等を活用して普及を図って欲しい。なお、これらの意見は法人化した防災科学技術研究所への委員の期待と声援の表れである。

6.外部評価委員

  氏 名 所 属
委員長 古谷尊彦 千葉大学大学院自然科学研究科教授
委 員 岩松 暉 鹿児島大学理学部教授
委 員 佐々恭二 京都大学防災研究所教授
委 員 山岸宏光 新潟大学理学部自然環境科学科教授

(順不同、敬称略)

7.外部評価委員会プログラム

平成13年 3月21日(水曜)

10時30分~10時40分 所長挨拶 片山所長
10時40分~10時45分 委員紹介 矢澤管理部長
10時45分~10時55分 外部評価/スケジュール説明 石田総括官
10時55分~11時05分 委員内部検討
11時05分~11時30分 全体構想・実施内容の説明・質疑応答
「斜面災害の発生機構に関する研究」
大谷部長
11時30分~12時00分 サブテーマの説明・質疑応答
11時30分~12時00分 (1)大規模崩壊の発生場に関する研究 井口主任研究官
12時00分~13時00分 昼 食
13時00分~14時00分 サブテーマの説明・質疑応答(続き)
13時00分~13時30分 (2)崩壊土砂の流動機構に関する研究 納口主任研究官
13時30分~14時00分 (3)斜面災害のハザードマップの高度化に関する研究 井口主任研究官
14時00分~14時10分 成果のとりまとめ及び質疑応答 大谷部長
14時10分~15時00分 意見交換、まとめ

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