ワークショップ『降雪に関するレーダと数値モデルによる研究(第2回)』


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    プログラム

日時: 2004年3月8日(月)〜9日(火)
場所: 防災科学技術研究所長岡雪氷防災研究所大会議室
      (新潟県長岡市栖吉町)
主旨
 日本近海上で発達し降雪をもたらす雲には、Lモード、Tモードの筋雲を始めとして、JPCZに伴う帯状雲、polar low、また低気圧本体に伴うものなど、さまざまなものがある。一方、地上降雪は〜100kmの小さいスケールでの変動が大きく、ある地点の降雪深や降雪種(雪片/霰)は擾乱の構造が関わっていると考えられる。これらについての知見は現在まだ不十分であり、その研究や予測技術の進展にはレーダと数値モデルとが不可欠である。そこで、これらを用いたこれまでの研究について話題を集め、『やってくる雪雲と地上降雪分布』について概念の体系化と降雪予測の精度向上に向けた議論を行いたい。
 具体的な議論の要点としては、
     ・雪雲の種類と特徴的な構造
     ・何が来ればどう降るかどこまで予測できるか?
     ・熱的、力学的な陸地の影響
などが挙げられるが、これに限らず関連する内容をワークショップの議題としたい。

※下記の講演タイトルに[pdf **メガバイト]とあるものは、講演資料のpdfにリンクしています。これらのpdfは、このワークショップの資料として掲載することで講演者より了承を得ています。なお、pdfファイルは容量がかなり大きいので、開く際にはご注意下さい。

日程: 第1日目 (3月8日)
13:55 開会
14:00−15:30 セッション1 (3講演) やってくる雪雲と降雪分布の特性

 降雪モードと降雪分布について
    中井専人  [pdf 1.6メガバイト]
 冬期季節風時の雪雲の構造に違いをもたらす要因
    山田広幸  [pdf 2.4メガバイト]
 北陸域の降雪特性とそれに関わる数値実験について
    熊倉俊郎
15:40−17:00 セッション2 (3講演) 雪雲の数値シミュレーションと予測
 雲解像モデルを用いた筋状雲の数値シミュレーション
    坪木和久  [pdf 2.4メガバイト]
 新潟地域における降雪のNHM実験
    岩本勉之  [pdf 0.5メガバイト]
 短時間大雪の面的監視予測技術の開発
    高田伸一  [pdf 1.4メガバイト]
第2日目 (3月9日)
9:30−11:20 セッション3 (4講演) 雪雲の構造と降雪過程
 雪片のモンテカルロシミュレーション
    圓山憲一
 寒気進入に伴い新潟県海岸付近で発達したバンド状降雪雲の構造
    岩波越  [pdf 1.5メガバイト]
 トランスバース型降雪バンドの形成過程に関する観測的研究
    坪木和久  [pdf 1.8メガバイト]
 帯状降雪雲上に発生したシア不安定波の構造と運動エネルギー収支
    川島正行
11:20−11:50 総合討論
11:50 閉会
※講演時間は質疑応答を含みます。


 ワークショップの概要は下記の通りです。なお、もう少し詳しい報告と各発表の関連文献については日本雪氷学会誌『雪氷』66巻3号(2004年5月)に掲載されています。

    概要

 今回のワークショップでは、数km〜数十kmスケールにおける雪雲の構造、発達過程について、概念の体系化とそれに基づく降雪予測の精度向上への糸口となるよう、レーダと数値モデルを用いた降雪の研究に関する講演を集め、討議を行った。
 防災科学技術研究所長岡雪氷防災研究所の中井主任研究員はドップラーレーダー観測をもとに雪雲の分類について「降雪モード」を提案し、モード毎の降水分布と出現特性とを示した。地球観測フロンティア研究システムの山田研究員はドップラーレーダー観測をもとに筋雲に伴う対流セルを3種類に分け、霰の有無と鉛直シアーで特性が説明できることを示した。長岡技術科学大学の熊倉博士は北陸域の降雪分布の特性について、数値モデル出力が平野部では過少評価、山岳域では過大評価となることを示した。新潟地方気象台の高田技術専門官は現業の降雪予報と短時間大雪の面的監視予測技術の開発について、36時間前から36時間後まで解析値、予報値を総合的に検討できるシステムを開発したことを述べた。防災科学技術研究所防災基盤科学技術研究部門の圓山博士は、モンテカルロ法と単純な凝集体モデルを結合した、現実の雪片に似た形の粒子による雪片成長のシミュレーションの結果を述べた。防災科学技術研究所長岡雪氷防災研究所の岩本特別研究員は境界値を固定した数値実験について、観測された降雪分布の特性が再現されたことを示した。防災科学技術研究所防災基盤科学技術研究部門の岩波主任研究員は、海岸付近のバンド状降雪雲について、下層収束の形成要因によって対流セルの振る舞いが異なってくることを示した。名古屋大学地球水循環研究センターの坪木助教授は2件発表し、シアー流中での対流(筋雲など)では対流の効果によってシアー場も変化し、ロール状からセル状対流に移る傾向があることを示した。またTモードの筋雲に対しては、upshear側における新しいセルの形成前に対流混合層上部を中心とした収束場が見られたことを示した。北海道大学低温科学研究所の川島博士は帯状降雪雲上に発生した水平シア不安定波に関するドップラーレーダ解析について報告した。
 最後に総合討論として、降雪過程の整理された記述にむけてポイントとなる概念について議論を行った。その中で、降雪過程、また雪雲の集団としての擾乱を考える場合に階層性を正確に押さえることが重要であることが指摘された。参加者からは、個々の講演に対する質問時間が少なかったのが残念という意見があり、総合討論との兼ね合いを少し工夫した方が良いと思われた。


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