報道発表
南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)沖合システムの整備完了へ
2024年6月18日
国立研究開発法人防災科学技術研究所
防災科学技術研究所は、南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)について、2019年より観測装置の開発・製造や陸上局の工事、沖合システムの敷設等を進めてきたところ、このたび沖合システムの整備を完了し、7月より試験運用を開始いたします。
1.内容
国立研究開発法人防災科学技術研究所(理事長:寶 馨)は、2019年より文部科学省地球観測システム研究開発費補助金による「南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)の構築」事業を実施しています(別紙)。
本事業では、南海トラフ地震想定震源域の観測空白域に設置するN-netから得られる観測データにより、地震や津波のメカニズムの解明、リアルタイム予測や長期評価の高度化等、防災科学技術の発展に寄与することを目指しています。
これまで観測装置の開発・製造や陸上局の工事等を進め、昨年度にはN-netの沖合システムについて海底への敷設工事を完了し、現在、海底から伝送されるデータの品質等の確認を行っています。7月1日には沖合システムの整備を完了し、試験運用を開始します。また、今秋を目途に防災科研が運用する陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)に統合し、ホームページ上での観測データ等の公開を開始する予定です。なお、観測データは気象庁に提供され、緊急地震速報や津波情報等にも活用される予定です。
今後、沿岸システムの敷設工事等を行い、今年度末にはN-netの整備を完了する予定です。
(別紙)南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)について
- 1.はじめに
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国立研究開発法人防災科学技術研究所(以下、「防災科研」という。)は、陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)を全国で運用しており、2019年からは、文部科学省地球観測システム研究開発費補助金により「南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)の構築」事業を実施しています。本事業は、南海トラフ地震の想定震源域のうち観測網が設置されていない西側の海域(高知県沖から日向灘)にケーブル式の海底地震津波観測システムを整備するものです。
- 2.N-netの概要
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N-netは沖合システムと沿岸システムからなる観測網で、それぞれのシステムは海底ケーブルと観測ノードで構成され、2つの陸上局に陸揚げされます。各システムには18台の観測ノードが繋がれており(計36台)、各観測ノードの中には地震を観測する地震計や津波を観測する水圧計等が入っています。
観測ノードにより観測されたデータは、光海底ケーブルで2つの陸上局に伝送され、陸上局からは地上通信回線網によって防災科研のデータセンター等に伝送されます。N-netの整備により、地震の揺れや津波を今までより早く直接検知します。
N-netから得られる観測データにより、地震や津波のメカニズムの解明、リアルタイム予測や長期評価の高度化等を進め、南海トラフ巨大地震発生時の被害軽減や防災科学技術の発展に貢献することを目指しています。図 南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)イメージ図 N-net観測点配置図
- 語句説明
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・陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)
防災科研では、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災を契機として、全国の陸域において高感度地震観測網(Hi-net)、全国強震観測網(K-NET)、基盤強震観測網 (KiK-net)、広帯域地震観測網(F-net)の整備・運用を行ってきました。また、16の火山において基盤的火山観測網(V-net)の整備を行い、火山活動を観測しています。
海域においては、2011年3月11日に発生した東日本大震災を受け、日本海溝海底地震津波観測網(S-net)を北海道沖から房総半島沖までの海底に整備し、2016年4月には、紀伊半島沖から室戸岬沖にかけて整備された地震・津波観測監視システム(DONET)が海洋研究開発機構より防災科研に移管されました。
これら全国の陸域から海域までを網羅する「陸海統合地震津波火山観測網」を「MOWLAS」(Monitoring of Waves on Land and Seafloor:モウラス)と呼んでいます。