防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
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〒305-0006 茨城県つくば市天王台3-1 Tel 029-851-1611 Fax 029-851-1622災害時における高齢者の現状と対応についての調査研究災害過程研究部門  大塚 理加2020.2.13 令和元年度 成果発表会■被災による高齢者の虚弱化への影響を明らかにする。■平時における高齢者の防災対策に関連する要因を示す。■被災高齢者への対応について、台風15号・19号の被害について、千葉県の現状を把握し、課題を検討する。平成28年熊本地震では、直接の被害による死者は50名だが、災害関連死は215名と圧倒的に多かった(熊本県,2019)。また、災害関連死には高齢者の割合が大きい。例えば、2011年の東日本大震災では、災害関連死3,723名のうち66歳以上は3,301名(88.7%)(復興庁2019年3月31日現在)、2016年の西日本豪雨では災害関連死53名のうち70~90歳代が40名(75.5%)であった(共同通信,2019)。このように、災害種別に関わらず、災害関連死では高齢者が多い。また、大澤(2015)は、東日本大震災前後の要介護認定率から、被災による要介護高齢者の介護度の悪化や後期高齢者への影響を示している。高齢者の災害による虚弱化は、本人のQOLを低下させるのみでなく、家族介護者の負担を増やし、介護保険の利用を増やすことから、自治体の負担も増大する。災害時の高齢者への適切な対応は、被災後の復興に向け、介護保険利用の減少や労働力の確保につながると考えられ、社会全体のレジリエンスを高めるための方策として重要である。そこで、本研究では、①被災による高齢者の虚弱化への影響の調査研究から、高齢者への災害対策の必要性を示す。そして、②地域高齢者の防災対策への関連要因を示し、平時の防災対策を検討する。さらに、千葉県の③要介護高齢者の被災時の支援状況への調査から、被災時の災害対応における具体的な課題を探る。①~③の研究を通し、高齢者の災害レジリエンスの向上に必要な施策や対策を検討する。研究の枠組み本研究では、高齢者の災害レジリエンスを向上する要因を明確化し、対応策を検討することで、社会全体の災害レジリエンスの向上を目指す。被災高齢者の虚弱化については、①熊本地震、西日本豪雨の被災前後の要介護認定率について、DID推定量を用いて、地域差等の影響を除いた重回帰分析を行い、被災後の高齢者の心身への影響を検討する。また、②JAGESデータ等の統計分析から、防災訓練への参加や高齢者への災害対応の実態を把握するとともに、関連要因をロジスティック回帰分析等で解析する。さらに、③千葉県の高齢者入所施設調査において、施設の高齢者への災害対応とその課題を検討する。また、地域包括支援センター調査から、在宅高齢者の被災対応の実態把握を行う。また、対応事例の質的な分析から、災害対応での具体的な課題を探る。これらの研究から、高齢者への防災対策や災害対応における現状の課題への改善策について提言する。平時の防災対策②地域高齢者の防災対策への関連要因について被災時の災害対応③要介護高齢者の被災時の支援状況について高齢者への災害対策の必要性①被災による高齢者の虚弱化への影響について高齢者の災害レジリエンスの向上社会全体の災害レジリエンスの向上

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