防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
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4年に一度じゃない、一生に一度だ水・土砂防災研究部門、国家レジリエンス研究推進センター、気象災害軽減イノベーションセンター  岩波 越2020.2.13 令和元年度 成果発表会~最新気象情報でスポーツイベント等を支援~■ラグビーワールドカップから、東京2020に向けて■MP-PAWR、LMA、VILナウキャストなど最新の観測・予測技術■イベント運営者、自治体、市民対象の実証実験内閣府の「2020年オリンピック・パラリンピック東京大会(以下、東京2020と記す。)に向けた科学技術イノベーションの取組に関するタスクフォース」と連携し、東京2020におけるショーケース化とその後の社会での実用化を目標として、研究開発成果によるイベント運営支援等の実証実験を行ってきました。実証実験では、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で開発された雨雲の立体構造をすき間なく30秒で観測可能なマルチパラメータフェーズドアレイ気象レーダー(MP-PAWR︔情報通信研究機構が運用)と、その特長を活かした1分間隔、250m格子、30分先までの10分間予測雨量情報や、落雷だけでなく雲の中、雲の間の雷を観測できる3次元雷放電経路観測システム(LMA)による雷情報などを活用しました。大雨直前予測手法として用いたVILナウキャストは、地面付近のレーダ雨量分布の代わりに、上空の雨雲の中の水の量(鉛直積算雨水量︔VIL)分布を用い、より早く上空の雨を検知することで、降雨の始まりや急発達時に予測が遅れるという従来の予測手法の課題解決を図ったものです。2018、2019年の暖候期に日本気象協会と協力して、約2,000人の市民、自治体のほか、日韓交流おまつりとつくばマラソン運営者、ラグビーワールドカップ2019組織委員会、東京2020関係機関にEメールと専用ウェブサイトを通して情報提供を行いました。実験中にも利用者の要望に応じた表示方法等の改良を行い、自動更新機能を含め、目的を特化したウェブサイトの有用性が評価されました。実証実験に用いたウェブサイト(大雨直前予測と雷分布)当面の目標は、開催まで半年を切った東京2020において、運営関係機関や観客に有用な気象情報を届けることです。大雨直前予測手法については、雨雲の移動方向推定方法の改良など技術的な課題に取り組むとともに、運営関係機関と協議を進めて、より使いやすいシステムを作ります。観客向けには、要望の多かったスマホアプリ化を日本気象協会と進めています。実証実験で雷情報の提供に用いてきたWeb-GISシステムは、雨、風、雹の情報を含めて一般公開の準備を進めています。利用者のニーズに応じた気象リスク情報を届けられるように、関係するインフラや社会動態を重ね合わせて表示し、雲や降積雪などの気象ハザードを追加していきます。平時から大規模地震災害等の応急対応、復旧・復興フェーズにも役立つシステムを目ざします。

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