「長周期地震動モニタ」を用いた実証実験地震津波火山ネットワークセンター/地震津波防災研究部門 木村 武志2020.2.13 令和元年度 成果発表会■長周期地震動のいまの観測情報と即時予測情報を合わせて表示する「長周期地震動モニタ」を開発■長周期地震動の予測情報の社会実装に向けて、「長周期地震動モニタ」を用いた実証実験を実施中南海トラフ地震や首都直下地震などの大地震時に発生する長周期地震動は高層ビルなどの長大構造物を大きく長く揺らすことでエレベータなどに被害をもたらすが、現行の緊急地震速報はその即時予測に対応していない。将来の長周期地震動による被害軽減に向けて、長周期地震動に関する予測情報やリアルタイムの観測情報をユーザーが効果的に利活用するための枠組み(社会の仕組み)やそれを可能にするためのシステムの整備を進めている。その一環として、防災科研が運用する陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)によるリアルタイムの長周期地震動に関する観測情報と、緊急地震速報の震源情報を用いた長周期地震動の即時予測情報を一枚の地図上で合わせて表示するWebサービス「長周期地震動モニタ」を開発した。2017年11月より「長周期地震動モニタ」を用いた実証実験を防災科研と気象庁の共同で実施している。Web上で参加登録したユーザーは、各自のPCやスマートフォンなどで「長周期地震動モニタ」を活用している。また、ユーザーに対して1年に1回程度アンケート調査を実施することで課題の抽出や効果の確認を行い、システムの改善も行っている。2018年度には、震度等を表示する強震モニタと「長周期地震動モニタ」の同時表示機能や、各ユーザーが予め登録した地点に対するピンポイントの予測情報を表示する地点登録機能を新たに追加した。さらに2019年度には、過去の大地震時の観測・予測情報をあたかも“今“地震が発生しているかのように表示する訓練モード機能を追加した。「長周期地震動モニタ」の各機能訓練モードを実装した「長周期地震動モニタ」を活用した実証実験の参加者募集をを2019年11月12日より再開している。さらに2020年1月には過去のアンケート調査で要望の強かった地震発生時の自動通知機能の実装を予定している。このように今後も実証実験の参加者からのフィードバックを得ながら、「長周期地震動モニタ」の高度化を効果的に進めていく予定である。「長周期地震動モニタ」を用いた一般ユーザーとの実証実験に加えて、民間企業等に対してリアルタイムの観測・予測情報を数値情報として配信することで利活用方法の検証などを行う実証実験も進めている。長周期地震動の予測情報の社会実装に向けて、これらの実証実験の拡大・継続を今後も進めていく予定である。
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