防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
109/144

屋根雪対策に向けた「雪おろシグナル」雪氷防災研究部門  平島 寛行2020.2.13 令和元年度 成果発表会■積雪深分布と積雪変質モデルから積雪重量分布を作成■屋根雪下ろしの判断の目安として積雪重量情報を公開■一冬で5万以上のアクセスがあり、屋根損壊防止に貢献雪氷災害は毎年100名前後の犠牲者を出していますが、そのうちの約半数が屋根雪処理中の滑落等、除雪中の事故になります。また、雪下ろしをしていない空き家等では、雪の重みによる倒壊も起きています。これらの事故を軽減するためには、安全対策のほか、適切なタイミングで雪おろしをする判断材料が必要となります。雪おろしの判断の際には屋根に積もった雪の量として、深さだけではなく密度まで考慮した重さの情報が必要となります。そのような密度まで考慮した積雪重量の分布情報を発信し、雪おろしの判断材料として利用してもらうために雪おろシグナルが開発されました。雪おろシグナルは新潟大学が開発した積雪深の情報を収集する「準リアルタイム積雪分布監視システム」と、時々刻々と変化する雪の詳細な過程を計算することにより、積雪深観測地点における積雪重量を10%前後の誤差で計算可能にした積雪変質モデル「SNOWPACK」の2つのシステムから構成されています。これらを用いて積雪深が観測されている各地点で積雪重量を計算して地理院地図上に重ね、地点間の値を内挿して積雪重量分布情報を作成し、その情報を雪おろシグナルとして公開しています。雪おろシグナルは自治体と連携しながら対象範囲を拡大しています。今後も現在の5県からさらに拡大させて全国の雪国に適用していきます。また、豪雪地帯の自治体との連携により、公共施設や空き家等の管理家屋における雪おろし実施の情報と雪おろシグナルの情報を組み合わせて、どの建物が雪下ろしが必要かといった情報を提供し、雪下ろしの効率的な管理に役立てる予定です。雪おろシグナルの画面とそれにアクセスするQRコード(図の右下)また、雪おろシグナルは観測された積雪深の情報を用いて計算しているため、観測地点から離れるとその精度は低下します。今後は地形の影響を考慮した内挿方法の改良や、他のモデルで推定された積雪重量分布との融合、降水量分布やリモートセンシングのデータの利用、機械学習の応用等により、積雪深観測地点から離れた場所における精度も向上させていく予定です。図は雪おろシグナルの画面です。倒壊リスクが少ない場所を緑、雪下ろしの喚起を促す300kg/m2以上の場所を黄色、家屋倒壊の恐れがある700kg/m2以上の場所を赤で示しています。また、雪下ろしを行った日と場所を入力することで、雪下ろし後に堆積した雪の量を計算する機能も有しています。雪おろシグナルをリリースした2018年には、56000件のアクセスがありました。今冬は新潟、山形、富山、秋田、長野の5県で実装しています。

元のページ  ../index.html#109

このブックを見る