防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
110/144

雪のレーダー降水量を正確に雪氷防災研究部門  中井 専人2020.2.13 令和元年度 成果発表会■雪のレーダー降水量は降雪粒子の種類によって約4倍の差異■降水粒子計と同時観測で降雪の種類を考慮した降水量を算出■正確なレーダー降雪量と雪/霰分布の実況・予測につながる技術気象レーダーでは面的に降水強度を推定できます。しかし、雨、雪、霰のように降水粒子の種類が異なると、同じレーダー観測値(反射因子)に対する降水強度の値は異なります。図の水色部分で示すように、その変動幅は4倍にも及びます。今降っている雪の強さについて、その幅のどのあたりを当てはめれば良いのか、即座に決める方法はありませんでした。そこで、気象レーダー、降水強度計、及び降水粒子計(光学式ディスドロメーター)の同時観測を行い、降雪粒子の差異がレーダー観測値の差異にどう反映するか調べました。レーダー観測値は、防災科学技術研究所雪氷防災研究センター(新潟県長岡市)設置の気象レーダー(MP2)の観測値を使用しました。地上観測は、レーダーから34.4km離れた森林総合研究所十日町試験地(新潟県十日町市)において、高分解能降水強度計による降水量、及び、降雪粒子計による粒子の種類の観測を実施しました。雪は落下速度が小さく風が観測に大きく影響するので、風対策をしています。観測結果の比較から、霰及び3mm以下の小さい粒子の値は変動幅のほぼ中央で雨とほぼ同じ、雪は雲粒付きの度合いによって変動幅の最小の値から最大の値まで変化する傾向を示しました。これは既存文献で理論的に示されたものと整合的です。しかし、南岸低気圧だけは例外であり、雲粒がほとんど付かないのにレーダー観測値に比して大きな降水強度を示しました。この研究の手法は既存研究と異なり、細かい時間分解能(10分)で値の変化を追跡することが可能なデータが得られています。本研究の概要。(左)観測、(中)解析結果(レーダー観測値と降水強度の関係)、(右)今後の展望。雲粒付きの度合いは地域によって異なる可能性があります。しかし、観測結果を地域特性として見るのではなく、雲粒付き度合いをパラメーターとして数式化することにより、解析結果を汎用的なものにできると考えています。そのためには、データ量を増やして解析する必要があります。また、南岸低気圧時にはレーダーからの降雪量推定が過少評価になり得ることを本研究は示唆しています。その理由を明らかにするため、雪氷防災研究センターにおいては、降雪粒子の詳細な形状を観測して解析を行っています。これらの研究を進めることにより、全国のリアルタイムの降雪量推定に適用できる手法が開発できると期待しています。その結果は気象レーダー観測で検証される降雪量予測に対しても有用といえます。

元のページ  ../index.html#110

このブックを見る