防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
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衛星データを用いた情報プロダクツ開発防災情報研究部門 統合解析研究室  平 春2020.2.13 令和元年度 成果発表会•被災状況の迅速かつ広域的に把握することは災害対応の初動体制確立に重要。•衛星データから災害対応に役に立つ情報プロダクツ生成が重要•台風19号では衛星から浸水建物数を推定するプロダクツを試作。災害が発生した際は、迅速かつ広域に被害状況を把握し、適切な初動体制確立や災害対応へつなげることが重要である。その把握手法として人工衛星等から地表面を面的に観測するリモートセンシング技術が期待されている。現在、災害が発生するエリアをいち早く衛星で観測し、災害対応に役に立つ情報プロダクツを生成したうえで、災害対応機関へ提供するための研究開発を行っている。宇宙機関(ESA)のレーダ衛星であるSentinel-1は、10/13早朝に各地で洪水が発生している状況を関東から東北にかけての広範囲で観測した。この観測タイミングでは、各地の浸水状況をよく表現できていることが判明した。そこで共同研究チームのメンバーである国際航業は、災害前の同じ衛星データを用いて、浸水域を抽出した。そして、防災科研は民間地図データに含まれる建物データを使用し、浸水建物を抽出した。抽出建物を市町村単位で集計し、自治体ごとの浸水建物数などを防災科研クライシスレスポンスサイトと災害時情報集約支援チーム(ISUT)へデータを提供した。このような衛星データによる「情報プロダクツ」が観測後すぐに入手できる仕組みができれば、被害の大きいエリアが把握でき、支援が必要なエリアはどこかを検討することが可能となるなど、災害対応に役立つことが台風19号の災害対応で明らかになった。衛星データが災害時に確実に入手でき、今回の事例で示したような情報プロダクツを多数作成し、災害対応へ活用が可能なシステムを構築し実運用できるよう、研究開発を推進していきたいと考えている。この研究は内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」の一環で実施しています。今年の台風19号の災害対応にも各国の衛星が被災地を観測したデータを災害時に共有する枠組みである「国際災害チャーター」が発動され、様々な衛星により観測が行われた。ヨーロッパ浸水域の推定結果推定浸水建物数の市町村別集計結果衛星Sentinel-1 被災前後レーダ画像カラー合成(災害前8/20 5:42, 災害後10/13 5:41)解析処理© Copernicus Sentinel data 2019国際航業防災科研情報プロダクツ化宮城県角田市付近を拡大した様子浸水域の抽出結果© Copernicus Sentinel data 2019国際航業衛星Sentinel-1 被災前後レーダ画像カラー合成浸水建物の抽出結果建物分布図NTT-Geospace

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