斜面観測による斜面崩壊予測手法の開発水・土砂防災研究部門 石澤 友浩2020.2.13 令和元年度 成果発表会■斜面崩壊の前兆現象を検知するセンサ■水分と変位の挙動から斜面の不安定化への進行状況を監視■斜面がいつ崩れるのか︖斜面観測による崩壊早期予測豪雨により突発的に発生する斜面崩壊は、流下した土砂により多くの被害が発生しており、斜面が「どのような状況なのか︖」や「いつ崩れるのか︖」等の斜面状況に関する情報が期待されています。斜面崩壊が発生する前には、様々な前兆現象が報告されており、前兆現象を早期に検知できれば、斜面災害からの警戒避難がより効果的に行われことが考えられます。図1(a)に降雨時の斜面崩壊の発生プロセスの概略図を示しています。斜面の中に雨水が入ることにより、斜面の強度が低下します。その際に、斜面内では、目視ではわからない地下水位の変化や微小な変位がゆっくりと発生しており、ある限界がくると崩壊し、大量の土砂が流下します。そこで、本研究では、目視ではわからない情報を定量的に検知できる観測センサの開発を行い、観測記録を用いて斜面の不安定化への進行状況や、警戒避難までの時間的切迫を示す予測手法の開発を進めています。具体的には、斜面の中の変位と水分を計測できるセンサ(ジョイント型マルチセンサ︓図1(b))を対象斜面に設置し、リアルタイムの観測記録から2つの予測手法で斜面の変化を検知します。例として、図1(c)は、地下水位と変位の観測履歴から、斜面の不安定化への進行状況を判断することができます。図1(c)では変位が発生せず水分が減少する過程では、安定へ向かっていることが判断できます。逆に、水分量が最大履歴を超えた場合、前兆現象といわれる斜面の微小な変位から崩壊時間を予測します(図1(d))。2つの予測手法を組み合わせることにより、通常時の斜面状況に関する情報だけでなく、崩壊直前では時間的切迫がわかるため、避難の判断支援ツールとして利用できます。斜面崩壊の前兆現象には雨量や地形条件が大きく影響しています。そのため、雨量と斜面変位に与える圧力変化の関係や表層の層厚推定等を明らかにすることにより、従来手法より避難までのリードタイムが取れる前兆現象の検知に繋がり、より正確に斜面の不安定化に関する情報を得ることが期待できます。大型降雨実験施設での実験や社会実験を実施し、センサの開発や判断支援ツールの開発等を他機関と連携し進めています。観測記録や大型降雨実験施設を用いた実験結果等は、前兆現象の発現機構に関する数値シミュレーションの精度向上に貢献できます。これらのツールは、観測センサの効果的な設置位置の検討等への利用だけでなく、空間的代表点となる観測値を用いて、広域に斜面の不安定化度合の評価にも期待できます。図1降雨時の斜面崩壊の発生プロセスと観測記録を用いた予測手法の概略図降雨雨水浸透地下水発生微小な変形土砂流下地形斜面崩壊崩壊発生予測時刻予測時間現在観測値(微小な変位)変位速度の逆数(観測値から算出)(b)観測センサ設置(c)履歴を用いた予測手法(d)崩壊時間の予測手法地下水位の変化降雨量斜面の変位観測値(d)の予測法へ[予測手法1]斜面内の変位と水分変化の履歴から斜面の状況を監視。[予測手法2]崩壊直線の変位から発生時間を推定。斜面内の変位と水分を測れるセンサ(ジョイン型マルチセンサ)ジョイント型マルチセンサ観測ロガー雨量計傾斜計間隙水圧計土壌水分計(a) 降雨による斜面崩壊の発生プロセス安定へ
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