防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
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我が国の災害情報の広域共有に関する課題防災情報研究部門 災害動態研究室  伊勢 正 2020.2.13 令和元年度 成果発表会2019.○○.○○○○○○○○○○○○○•我が国の災害情報システム(被害や対応状況を共有するシステム)は、都道府県の主導で整備されている。•その一方で、個別に整備されたために、広域共有が困難⇒ISUTが評価されていること自体が、広域共有の課題•日米の広域情報共有訓練の事例から、我が国課題について考察する南海トラフ巨大地震のように、激甚かつ広域な災害が発生した場合、各自治体による災害対応は極めて困難であり、国や被災していない自治体による円滑かつ的確な支援が重要となる。この際、支援のためのリソース(人的、物的資源)を効果的に被災地域に投入するためには、被害の全体像を把握することが不可欠である。しかしながら、従来、自治体の災害情報システム(被害や対応状況を共有するためのシステム)は、各都道府県が個別に整備を進めてきた。このため、広域な情報を統合的に管理することが困難であり、被害の全体像の把握に著しく支障をきたす可能性がある。こうした状況を踏まえ、防災科研では、災害情報が適切に流通する社会をめざし、災害情報の標準化に取り組んできた。我が国の代表的な広域防災訓練『みちのくALERT2018』と米国の『Capstone-14』と比較より、災害情報の広域共有の課題について考察する。陸上自衛隊東北方面隊が主催し、東北地方の自治体および防災関係機関が参加する防災訓練がみちのくALERTである。防災科研は、2018年11月に実施された、みちのくALERT2018において、東北6県および自衛隊に、他機関の情報を取込むことが可能な、標準化されて災害情報システムを仮構築し、各県庁および自衛隊の各部隊から相互に情報共有を行い、広域に災害情報を共有することの効果を検証した。概要みちのくALERT2018自衛隊自衛隊用のサイトに自治体(青森県)の情報を取込む自衛隊☑青森県自衛隊は、この時点では、八戸市周辺の被害状況しか把握していない青森県の情報を取込むことで、多くの被害情報を直接把握することができるPoint目的みちのくALERT2014以降実施してきた図上訓練及び各種会議等の成果を踏まえ,自治体,関係機関及び自衛隊が連携した大規模実動演習を実施して,東北地区の災害対応能力の向上を図る.時期11月9日(金)~11日(日)・9日:前段訓練(図上訓練)・10~11日:後段訓練(実動訓練)場所東北地区全域コンセプト「1人でも多くの命を救うために」主催陸上自衛隊東北方面総監部参加機関東北6県,139市町村,72関係機関Capstone-14は、アメリカ合衆国中西部、中東部、南東部、南部の境界付近の7つの州(アラバマ州、アーカンソー州、イリノイ州、インディアナ州、ケンタッキー州、ミシシッピ州、ミズーリ州、テネシー州)が加盟するCUSEC: Central United States Earthquake Consortium(中央アメリカ地震コンソーシアム)が、2014年6月に実施したNMSZ(New Madrid Seismic Zone︓ニューマドリッド地震帯)による地震を想定した大規模防災訓練である。Capstone-14ミズーリ州アーカンソー州イリノイ州インディアナ州ケンタッキー州テネシー州アラバマ州ミシシッピ州みちのくALERT2011Capstone-14(1) 実施期間11月9日(金)~11日(日)2014年6月16日(月)~20日(金)(2) 主催機関・陸上自衛隊東北方面隊・東北6県は,各県内の訓練については企画するが,全体の枠組みは自衛隊が企画する.・CUSEC:CentralUnitedStatesEarthquakeConsortium(中央アメリカ地震コンソーシアム)・8つの加盟州,10の準加盟州からなる.(3) 準備期間・約18か月(災害情報の広域共有のための準備期間)・約3年(Capstone-14の準備全体の期間)・広域情報共有に関する協議の具体的記録は,約22か月前から(4) 共有する情報項目・「火災・災害等即報要領」(消防庁)に規定される第4号様式に情報項目が規定されている.・EEI:EssentialElementsofInformation(情報の必須要素)として,NISC:NationalInformationSharingConsortium(全米情報共有化協会)が規定し,標準化されている.(5) 情報共有システム・SIP4D利活用システム(訓練用に防災科研より提供)・VirtualUSA(DHS:DepartmentofHomelandSecurity(国家安全保障省)のプロトタイプシステム)(6) 報告書・AAR:AfterActionReview(事故研究会)を陸上自衛隊東北方面隊の主催で実施.公開資料はない.・AAR:After-ActionReport(活動報告書)として整理され,インターネット上で公開.■主催機関の違い︓自治体がリーダーシップを発揮すべき主催機関が、日本では、“主たる任務”が国防であり、防災は“従たる任務”とする陸上自衛隊である。これに対して、米国では、各州のOB等から構成されるコンソーシアムが主要な業務の1つとして、広域共有に取組んでいる。日米比較■共有する情報項目とシステムの整合我が国においても、消防4号様式に代表されるように、災害時に共有すべき情報項目の整理はされている。しかしながら、あくまでも“消防庁の様式”であり、各県が構築するシステムとの整合が図られていない。■SIP4Dの都道府県側の端末としての標準化現在、研究開発、社会実装を進めているSIP4D(基盤的防災情報流通ネットワーク)を都道府県側で利活用し、自治体の情報をSIP4Dで共有するためにも、災害情報の標準化は不可活であり、米国の先進事例を研究することで、その成果を国内に反映させたい。今後の展望― みちのくALERT2018とCapstone-14の比較より ―

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