雪氷の非破壊3次元解析について雪氷防災研究部門 安達 聖2020.2.13 令和元年度 成果発表会■雪氷用X線CT・MRIによる雪氷試料の非破壊3次元可視化■雪氷試料の雪粒子・空隙の3次元計測■積雪変質・雪崩発生予測モデルの精度向上への寄与数ある雪氷災害のなかで代表的なものとして「雪崩」が挙げれられます.雪崩には,積雪層内の壊れやすい層(弱層)の上方に積もった積雪層が滑り落ちてくる表層雪崩と,融け水や雨水が積雪底面と地面の間に到達し積雪層全体が滑り落ちてくる全層雪崩があります.どちらの雪崩でも発生を予測するためには,積雪層内の雪質の変化の様子を正確に把握する必要があります.雪質を確認するために積雪断面観測が行われますが,雪質の判定を行うためにに,積雪断面から積雪の一部を削り出し雪粒子を一粒一粒ばらばらにしルーペで観察していました.しかし,この方法では積雪層内で雪粒同士がどのように連結しあって,複雑な3次元的構造をもっているかを確認することができませんでした.そこで積雪の3次元的構造を非破壊かつ詳細に把握するため,雪氷試料の撮像に最適化した雪氷用X線CT装置を使用して積雪の3次元可視化データを取得しました.これまでに積雪の3次元データの解析手法として,医療分野で用いられる骨梁解析手法が用いられてきましたが,積雪(図左上)は骨梁よりもはるかに複雑な構造を持っており満足できる解析結果を得ることが困難でした.また,積雪内の水の分布や移動の様子を理解するためには空隙の大きさや分布を正確に把握することが重要です.そのため,新たに積雪の粒子や空隙を3次元的にばらばらに分解し,一つ一つの塊について形状や位置の情報を得る解析手法を用いることが必要でした.雪氷試料の非破壊3次元計測と解析結果図右上は積雪の中の空隙を3次元watershed法を利用してばらばらに分解した様子です.分解された空隙の大きさとその大きさの分布から,その積雪がどの程度水分を保持できるか推測することができます(図右下).この結果は雪氷用MRIを用いて計測した結果とほぼ一致していて,乾いた積雪を雪氷用X線CTを用いて計測することで濡れた積雪中の水分分布正確にを推測できることを示しています.今後はこの解析手法を用いて粒径や密度を調整した積雪試料や天然の積雪試料など,様々な雪質のデータの取得および解析を行い,積雪変質モデルの精度向上を目指し,最終的には雪崩発生予測の精度向上を目的としています.また.ひょう(図左下)やアイスコアなどの積雪試料以外の雪氷試料の3次元構造解析への応用を進めています.積雪の3次元X線CT画像ひょうの3次元X線CT画像試料提供水・土砂防災研究部門出世ゆかり研究員積雪の空隙の3次元分割積雪の水分保持の様子高さ(m)含水量
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