長距離無人機による災害情報収集システムマルチハザードリスク評価研究部門 井上 公2020.2.13 令和元年度 成果発表会■100 kmを飛行可能でかつ安全な小型固定翼無人機■市町村が運用できるシンプルで完全自動化されたシステム■GIS上での迅速な空撮画像の閲覧(中部大学と共同)近年無人航空機の災害分野での活用が進んでいる。航空機や衛星に比較して、高い分解能、迅速性、経済性が特長である。一般の回転翼ドローンは飛行時間20分、飛行距離10km程度に限られるため、災害現場に出向いて運用する必要がある。しかし大規模災害では、各地区の運用者は被災者となり動けず、近隣の運用者は道路の不通で入れない。撮影ができても、通信が遮断・制限されれば災対本部への画像の提供は困難となる。そこで我々は、自治体が発災後1時間を目途に管内の主要地域の被災状況を把握することを目標とした長距離小型固定翼無人機の開発と運用実験を重ねている。固定翼機は回転翼機と比べて2倍の速度と5倍の時間で10倍の100kmを飛行できる。機体は発泡スチロールでできているため、万が一墜落しても住人を傷つける可能性は低い。これを役場や消防本部に複数配備すれば、管内各地区の被災状況を迅速に把握でき、その後も必要に応じて繰り返し状況を把握することが可能となる。固定翼機の欠点である離着陸の難しさは垂直離着陸(VTOL)またはカタパルトとパラシュートで解決する。VTOLは回転翼型の離着陸ができるが飛行距離は半分程度となり安全性も減ずる。パラシュートは正確な着陸はできないが距離と安全性は減じない。また現状のシステムは機能が多すぎ、発災直後の混乱した状況では慣れた者でも間違えずに操作することが難しい。もし運用担当者が被災すれば機能しない。災害時に必要なシステムは、電源投入ボタンひとつで建物の屋上のカタパルトから自動発進し、あらかじめ決められたルートを飛行して帰還するようなものである。長距離を飛行できる固定翼無人機のみがそれを可能にする。100km飛行する固定翼無人機50km飛行する同形の垂直着陸機(VTOL)より使いやすく高性能のシステムを目指して改良を重ねる。実用システムには高い信頼性が要求されるため、繰り返し運用実験と対雨・耐風実験を行う。スマートホンの上空利用の解禁に備えて、画像閲覧システムにリアルタイムデータ入力機能を付加する。撮影された画像は、災害対策本部の意思決定のために地図上で閲覧する必要がある。処理に時間のかかるオルソモザイク画像や3次元SfMモデルは初動では必要ない。我々は生の画像をGIS上で迅速に閲覧できる「真下写真プレーサー」と「斜め写真ブラウザー」を中部大学と共同で開発し、三重県南伊勢町にドローンとともに試験導入した。このシステムを固定翼機の空撮画像にも適用できるように改良中である(e-ASIA JRP)。これまでドローン導入実験で協力を進めてきた三重県南部の自治体と消防および関心のある他の自治体に本システムの試験導入を行う。社会実装には民間による製品化とサポートが必要なため、協力可能な企業と実用化に向けての共同研究を実施する。
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