防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
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太陽光パネルを設置した屋根からの落雪の飛距離 ―落雪被害防止のために―雪氷防災研究部門  小杉 健二2020.2.13 令和元年度 成果発表会■近年、太陽光パネル(太陽電池板)を設置した屋根からの落雪に よる被害が発生 ■雪塊と太陽光パネルの間の動摩擦係数を実験的に測定 ■得られた動摩擦係数を用いた計算の結果、太陽光パネルを設置した屋根からの落雪は 通常の屋根の場合に比べ13%程度遠くまで飛び出す事が判明 近年、太陽光パネルを設置した屋根からの落雪による被害が、日本海側の積雪地域のみならず関東地方などでも発生している。太陽光パネルは滑りやすく屋根からの落雪が通常の屋根の場合に比べ遠くまで達する事がその原因と考えられる。本研究では実験的に測定した、雪塊と太陽光パネルの間の動摩擦係数を用いて、太陽光パネルを設置した屋根からの落雪の飛距離の検討を行った。 雪塊と太陽光パネルの間の動摩擦係数を次の2つの方法で実験的に測定した。 ・水平に設置した太陽光パネルの上に雪塊を置き、荷重計で押 して滑らせる時に荷重計にかかる摩擦力を測定し、摩擦力と雪 塊の重量の比として動摩擦係数を求める ・傾けて設置した太陽光パネルの上を滑り下る雪塊の運動を側 方からビデオ撮影し、雪塊が加速する運動の解析から動摩擦 係数を求める 2つの方法で得られた雪塊と太陽光パネルの間の動摩擦係数は、0.01~0.07の範囲の値を取った。この値は,新しい塗装鋼板に対する値の0.08やポリエチレン膜(ブルーシート)に対する値の0.09に比べ小さいことが確認された。 屋根からの落雪の飛距離を運動方程式に基づき計算を行った。単純化するために、屋根の全面が太陽光パネルでおおわれていると仮定した。棟から軒先までの水平距離が10m、軒先の高さが10m、屋根が3寸勾配(水平距離10に対し高さが3の傾斜)の場合の落雪の軌跡の計算結果を図に示す。比較として通常の屋根に広く用いられる塗装鋼板に対する計算結果も示す。この例では、太陽光パネルを設置した屋根からの落雪は通常の屋根の場合に比べ最大で13%遠くまで飛び出す事が分かった。この様に太陽光パネルを設置すると、屋根からの落雪の飛距離は顕著に増大するため注意が必要である。 屋根からの落雪の軌跡の計算結果の例(側面図) 雪塊と太陽電池板の間の動摩擦係数は雪塊の雪質や乾湿等に依存すると考えられるため、これらの条件を考慮した研究が今後必要である。ここに示した図は、軒先の高さが10m未満の 場合の落雪の飛距離や、落雪の飛び出しを防ぐために必要な柵の高さを読み取る事も可能な有用性の高いものであるが、更なる活用方法について検討を進める予定である。 棟から軒先までの水平距離 10m 3m (太陽光パネル) 屋根

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