防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
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2019年10月12日に市原市で発生した竜巻の被害調査水・土砂防災研究部門  鈴木 真一2020.2.13 令和元年度 成果発表会■竜巻被害の2日後に現地で被害調査を行った。■竜巻の被害に典型的な線状の被害分布が確認された。■被害域の長さは2 km 程度であった。台風19号が東海・関東地方に接近していた2019年10月12日の午前8時10分頃、千葉県市原市で竜巻と推定される突風が発生し、1名が亡くなり、多数のけが人が発生しました。また、多くの家屋が被害を受けました。水・土砂防災研究部門では10月14日に現地調査を実施し、被害分布と被害の概略について調査を行いました。調査の結果、市原市下野の住宅地では深刻な家屋の損壊が多く見られました。また、その北西側にある市津多目的グラウンドではフェンスの支柱が多く倒れるなどの深刻な被害が見られました。竜巻によるものと思われる被害は、ここからさらに北西側及び南東側にも広がっており、全長2 km 程度にわたって線状に竜巻の痕跡が見られました。また、フェンスの傾きや家屋の被害の様子は、突風が南東から北西に向かって吹いたことを示唆していました。このように、突風被害が線状になっており、その線とほぼ同じ方向に突風が吹いた痕跡があることは、竜巻による突風被害の特徴です。本被害では、撮影された竜巻の動画がメディアで紹介されていることから、突風は竜巻であることが推定されますが、被害状況を調べることで、突風が確かに竜巻であったことを調査から調べることができました。なお、本調査はすべての被害を網羅したものではなく、本調査で確認されたもの以外にも被害はあった可能性があります。14日の調査で被害が確認された場所と被害の状況の概況。竜巻は積乱雲が発生させる大気中の渦です。本事例でも、関東地方に設置されている気象レーダーによってその積乱雲が捉えられており、接近する台風19号の右前方の積乱雲で発生していることがわかりました。この積乱雲は、竜巻発生時によく見られるメソサイクロンと呼ばれる直径数km の渦を持っていたことがわかりました。また、この積乱雲を含む複数の積乱雲が列状に並んでおり、他の積乱雲でも同様の渦が見られました。今後は、気象レーダーの観測データを解析することで、この事例における積乱雲の発生環境について調べると共に、竜巻発生時に有用な情報発信に繋がるデータの抽出を目指します。また、科学研究費補助金の特別研究促進費における「令和元年台風19号及び台風21号による広域災害に関する総合研究」に参加し、本事例の解析を行います。地図は国土地理院地図(電子国土Web)を利用

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