防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
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中小地震の揺れから“建物”を評価–逐次の既設建物評価システムの構築研究– 中小地震データの活用地震減災実験研究部門  梶原 浩一2020.2.13 令和元年度 成果発表会普段の生活と経済活動の維持・継続のためには、将来の地震に向けた既存建物の評価と対策が不可欠です。一般に、建物の健全性モニタリングシステムは、地震による構造物の損傷と継続利用の可否判断を目的としており、重要性の高い建物等に実装が進められています。一方、既存の建物の耐震性能については、設計段階で検討されてはいるものの、建設後の検証は無く、地震や経年による変動もあるため、その実際の性能は未知です。このため、将来の大きな地震に向けた対策を検討するための性能情報が乏しい状況にあります。これに対して、常時の微動による建物の応答を取得して、構造物の揺れやすい周期特性やその変動を調べる研究なども行われています。しかし、微動によるデータのため、事前の地震対策へのアクションに結びつきにくいところが課題です。そこで、本研究では、比較的安価なMEMSセンサ-等を具備したセンサユニットと、建物が遭遇する頻度が高い中小地震(震度2から4程度)を用いた建物の動特性(剛性や減衰特性)を抽出する計算アルゴリズムを開発し、建物評価のための情報をまとめたカルテ作成のシステム構築を目指しています。また、この技術を、E-ディフェンスや大型耐震実験施設の利活用にも使用します。具体的には以下を実施します。1)建物の動的特性推定センサの開発・検証2)中小の頻発地震を用いた動的特性抽出技術の開発3)構造物に敷設するための技術検討上記の1)では、データの解析アルゴリズムを格納したセンサシステムを開発します。上記の2)では、構造物等の剛性、減衰等の動的特性を精度よく推定できるアルゴリズムを開発します。また、シミュレーションによる多層階等での応答や非構造部材の挙動推定の研究も実施します。上記の3)では、実際の建物に敷設できるように、メーカーと協力して建物の構成部材に組み込むための技術検討を実施します。これまでは、研究の推進のための準備として、無線センサを用いた同時多点計測の技術検討(図1)やこれまでのE-ディフェンスでの実験データを用いた動的特性の抽出技術の研究を勧めてきました。2020年から地震減災実験研究部門では、地震対応力向上のためのダメージ評価手法の研究開発プロジェクトを計画しています。そこで、1)から3)の研究項目を実施すると共に、実大規模のオフィス建物試験体を作成し、E-ディフェンスで、様々な中小地震加振によるシステムの性能検証を実施します。社会展開を意図し、民間企業や防災関連機関と連携して進めます。■中小地震を用いた建物評価のためのカルテ作成■建物に容易に具備できるセンシングシステム開発■社会とE-ディフェンスや大型耐震の利活用へ展開0102030400510107K3rd0102030400510107K2nd0102030400510107K1st0102030400123106C3rd0102030400123106C2nd0102030400123106C1st減衰の時刻歴剛性の時刻歴()()()()tttt++=MxCxKxf()()()()ˆˆˆˆˆˆˆtttt++=MxCxKxf()()()()1ˆˆˆˆˆtt−⎡⎤=−⎢⎥⎢⎥⎣⎦TTCXXXfMxK座標変換Microelectromechanicalsystem(MEMS)センサー図1無線装置を応用した多点計測システムの開発過去のデータ等を活用図2中小地震から大地震︓動特性の時刻歴変動の研究DBデータ集積様々な地震防災・減災に関わる機関、企業等へデータ解析カメラ動的特性推定センサ揺れやすさと揺れの幅を評価揺れの収まり方を評価図3E-ディフェンス実験によるシステムの実証イメージ

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