防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
19/144

火山ハザードマップのデジタル化とその利活用について火山防災研究部門  河野 裕希2020.2.13 令和元年度 成果発表会■常時観測対象のうち30火山のハザードマップをデジタル化しました■デジタル情報によりハザードマップの利用範囲が広まり、防災対策へのさらなる活用が期待されます火山ハザードマップでは火山ごとに想定されている火山災害がまとめられています。その目的としては自治体の火山防災計画作成のためや発災時の個々人における適切な判断に必要な事前知識のためなどが挙げられます。ハザードマップは自治体より紙媒体で周辺住民へ配布されていますが、観光客等への周知に関しては難しい部分があります。防災科研では2019年度までに常時観測対象となっている50のうち30火山のハザードマップのデジタル化を実施しました。火山ハザード情報をデジタル化することにより、Webマップを用いた表示が可能となり、いつでも誰でもどこからでも閲覧できるようになります。また紙媒体では表示のカスタマイズができず不便な場合もありますが、デジタル化情報であれば必要なものだけ表示させたり、各種地理空間情報と比較検討するなど汎用性が高まり、より一層火山防災対策に利用できると考えられます。本年度はデジタル化されたハザード情報の利活用について検討を行いました。Webマップにハザード情報を載せてデジタル版ハザードマップを作成し、防災訓練時や学会にてデジタル版ハザードマップを実際に見ていただいたところ、例えば北海道で見られるような、近隣に複数の火山がある自治体においては特に需要が高いことを確認しました。またマルチハザードを通知するシステムや、ハザードと各種施設の分布を比較しリスクランクを付けるといったリスク評価マップ試作版の作成も実施しました。特に本年度は那須岳のリスク評価を重点的に行い、デジタルデータの有効性を検証した一方でデータの取り扱いについての課題を確認しました。図那須岳のデジタル化したハザード情報(右)と各種施設との分布比較により作成された試作版リスク評価マップ(左)。那須岳火山噴火警戒レベル導入検討委員会報告書(平成21年3月発行)内図7-9において掲載されている公共施設データを最新版(平成27年版)に更新した上で左図を作成した。デジタル化されたハザード情報については現在データベース化が進められています。これによりデジタルデータへのアクセスが容易になり、将来広くデータを利用していただけることを目指します。またハザードマップやリスク評価の結果が、風評被害につながらぬよう、ハザードマップが作成された仮定条件や結果の精度などについて利用者が正しい知識を持てるように環境を整備することも必要だと考えています。ただ恐怖感を与えるのではなく、あくまでも必要な知識を持ってもらうためのコンテンツの1つであることを念頭に置き、表現方法を模索・検討していく必要があります。またハザード情報のリアルタイム化に関する研究との連携により、動的情報の掲載についての具体的な仕組み作りも視野にいれ、ハザードマップのさらなる利活用方法を検討し被害軽減につなげたいと考えます。図の背景には国土地理院の地図を使用しました。社会基盤データは国土交通省が公開している国土数値情報を使用しました。

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る