〒305-0006 茨城県つくば市天王台3-1 Tel 029-851-1611 Fax 029-851-1622火山性地震・空振の識別方法の考案火山防災研究部門・火山研究推進センター 黒川 愛香2020.2.13 令和元年度 成果発表会■火山噴火に伴う地震・空振の識別は対応策を考える上で重要。■硫黄島での噴火微動と素性のわかっているシグナルの特徴を抽出。■観測点が少ない火山でも地震と空振を識別する方法を考案。火山では地震計と空振計で共通の現象を観測することが多くあります。このようなシグナルは空振が地震計を揺動させたか、あるいは地震が空振計を揺動させたときに観測されます。一般的に空振に対する地震の振幅比が~1 μm・s-1/Paのときは空振、~1000 μm・s-1/Paのときは地震だと言われていますが、詳細な検証はされていません。しかし空振が発生した場合は火口からガスや火山灰、噴石等が噴出することも考えられるため、地震と空振の識別は現象への対応策を考える上で重要となります。本研究では、2013年4月11日と2018年8月12日に小笠原硫黄島で発生した噴火に伴って観測された火山性微動を例に、シグナルが地震か空振かを識別する方法を考案しました。この方法ではまずシグナルの空振に対する地震のパワーの割合(応答関数)を求めます。次にこれを意味のある周波数帯域でバックグラウンドノイズと比較し、大きければ地震、小さければ空振として識別します。解析の結果、右上図のように2013年の微動は空振、2018年の微動は地震であったことがわかりました。特に2013年の噴火に関しては実際に大きな噴石の飛散も確認されており、これらの噴出時に空振が発生したと考えられます。一方、明らかに地震と空振だとわかっているシグナル(地震︓島内で発生した構造性地震、空振︓航空機ノイズ)に対しても同様の解析により地震・空振の識別できたことから、本方法の妥当性も示されました。硫黄島のような至るところで頻繁に噴火する火山では網羅的な観測ができず、噴火発生の把握すらも困難な状況です。しかし噴火に伴って空振が発生した場合、ガスや火山灰、噴石等の噴出に注意する必要があります。そこで本方法により地震か空振かを識別した結果は、噴火対応のための情報として活用できると考えます。また本方法では1観測点の情報のみのデータを使用して地震と空振の識別ができるため、観測点の少ない火山への応用もできると考えています。本研究では2013年、2018年硫黄島噴火を例として、火山噴火に伴う地震と空振の識別方法の開発を行いました。その結果、2013年、2018年硫黄島噴火に伴って観測された火山性微動はそれぞれ空振、地震であったことが明らかとなりました。火山噴火時の振動現象が地震と空振のどちらなのかを知ることは硫黄島だけでなく他の火山でも噴火対応をする際に重要な情報となります。そこで今後は同様の解析を他の火山でも行い、識別方法の有用性を調べていきたいと思います。一方硫黄島では新しい火口を作る噴火も多く、常時観察によって噴火位置の把握をすることが困難です。そこで地震計・空振計等の観測機器で得られたデータを最大限に利用して必要な情報を提供することが重要です。今後は噴火位置の推定と合わせて高い精度で地震と空振を識別するために、島内の複数の観測点のデータを使用して手法の改良に努めていきたいと考えています。時間(s)地震空振地震計空振計地震︖空振︖各シグナルの応答関数(上), 地震と空振の発生イメージ(下)周波数(Hz)空振:航空機ノイズ(ー)地震(+)噴火微動(ー)バックグラウンドノイズ応答関数(μm・s-1/Pa)周波数(Hz)2013年噴火2018年噴火噴火微動(+)2013年噴火
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