防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
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〒305-0006 茨城県つくば市天王台3-1 Tel 029-851-1611 Fax 029-851-1622レーダ技術による火山性地殻変動観測火山研究推進センター  姫松 裕志2020.2.13 令和元年度 成果発表会○○○○○○○○○○○○○○○■時系列解析による火山性地殻変動の高精度抽出■火山カルデラにおける内陸地震時・地震後地殻変動の解釈■火山性地殻変動機動観測のための可搬型レーダ干渉計の開発レーダによる地殻変動観測は,火山活動(もしくはその他の地球物理現象)に伴う地殻変動を“面的に”検出できる点で優れている.をはじめとする現場観測網が捉える“点”としての情報と比較して,再現実験における強い拘束条件を与えることから事象の発生メカニズムの解明に貢献してきた.令和元年度は文部科学省「次世代火山研究推進事業」課題サブテーマリモートセンシング技術の高精度化の枠組みで,以下件のテーマに取組んだ①年草津白根山水蒸気噴火に伴う地殻変動信号の抽出とその解釈,②三宅島カルデラにおける沈降様式の時空間変化が示唆する変動力源深さの移動,③阿蘇カルデラにおける年熊本地震後地殻変動の検出とその物理モデル,④可搬型レーダ干渉計の観測実験.①年草津白根山水蒸気噴火の事例ではノイズの原因となりうる冠雪と植生の影響を回避することにより,噴火に伴う詳細な地殻変動の描像の抽出と数値計算による再現実験を通して,地下熱水の挙動が大きく関与していることを指摘した.②年における三宅島カルデラ沈降様式の空間的な変化を捉えた.カルデラ直下の変動力源が深い領域から浅い領域に移ったことを示唆し、火道内の重力不安定環境がもたらした影響であることも示唆している.③年熊本地震時・地震後地殻変動データに基づく阿蘇カルデラ内の地殻不均質構造の推定のための準備段階として、衛星データの解析と地殻変動場の推定をした.断層運動・火山活動に起因しない変動も捉えた.④火山性地殻変動を機動的に観測するための可搬型レーダ干渉計の試験観測を行った.筑波山と霧島山を対象として,現場投入する際の最適な変数の探索とデータの品質評価をした.研究対象地域と各研究課題の概要図当該研究課題は火山活動に関する研究のうち,「レーダ技術による地殻変動観測」と「数値計算による再現実験」を通して噴火準備過程・噴火推移の予測・情報力の向上を目指している.火山活動に伴う地殻変動は火山下で生じた事象の応答として地表に現れる変化であり,火山活動の活動評価や噴火推移予測のための基盤的情報源である.レーダによる地殻変動観測は面的な情報を得られる点で優れており,今後も再現実験を通した地殻変動様式の解明を含めて推進すべき研究課題である.時系列解析手法の適用によって小さい振幅の火山活動に伴う地殻変動の高精度検出手法の検討をすすめる.可搬型レーダ干渉計の開発は人工衛星による観測を待たずに機動的に地殻変動を観測する手法の確立のために重要である.再現実験に関しては観測手法の高精度化に伴い,従来の近似解では再現不可能な観測事例も報告されている.地形の次元空間構造や地殻内部不均質構造を考慮した数値計算による再現実験の高度化は,地殻変動観測の高精度化と並行して推進する必要がある.レーダ技術による広範かつ高空間分解能な地殻変動観測手法と数値計算による再現実験の高度化の融合が,火山活動に伴う地殻変動の発生様式の解明に貢献し,噴火準備過程・噴火推移に関する予測・情報力の強化につながる.

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