防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
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〒305-0006 茨城県つくば市天王台3-1 Tel 029-851-1611 Fax 029-851-1622地震の揺れから“人”を守る–室内空間における機能維持– 首都圏レジリエンスプロジェクト地震減災実験研究部門  佐藤 栄児2020.2.13 令和元年度 成果発表会過去の地震災害において、室内における非構造部材、家具什器による被害が建物施設の機能の低下とともに人的被害を引き起こしています。そのため、「室内空間における機能維持」という課題で、建築構造要素以外の室内の非構造部材、家具什器が引き起こす地震災害に着目し研究を推進しています。ここでは、地震時における室内空間のより効果的な機能維持を実現させ、得られた成果の展開をめざしています。そのため、以下の項目にごとに研究を推進しています。1)機能維持性能の検証システムの確立と標準化2)機能維持に関わる判定法の科学的創出3)総合的な耐震性向上・機能維持のための対策検討4)人的影響・防災教育システムの検討「機能維持性能の検証システムの確立と標準化」では、室内空間を再現し、繰り返し実験可能な振動実験検証システム(E-ディフェンス利用)を構築します。これを用いて室内空間の安全性の評価などを同一条件で実施する手法を提案し、実験手法の標準化などをめざします。「機能維持に関わる判定法の科学的創出」では、人が地震被害を判断する時、視覚、聴覚、嗅覚などからの情報を用いることに着目し、映像や音等(五感センサ)を利用した定量的な被害評価システム(図1-a)の構築を目指します。「総合的な耐震性向上・機能維持のための対策検討」では、様々な状況下で設置された家具什器を含んだ各種非構造部材の地震被害を、より簡易で効果的に低減できる対策方法を検討します。「人的影響・防災教育システムの検討」では、振動実験では直接的に評価できない人的被害の影響に関して、過去の地震災害における人的な実被害と実験時の評価による想定被害とを融合させ、人的被害を含んだ被害モニタリングシステムの構築をめざします。熊本地震おける人的被害の原因について、図1-bに示します。被害原因の約半数近くが、家具家電の転倒や非構造部材によるものです。地震時の揺れに驚き慌てて避難した場合などによる本人の転倒、転落による被害も1/4程度の割合でみられ、地震時の適切な行動を検討することも、被害低減につながります。これらより、家具什器、屋内設備等を対象とした研究を推進することが地震災害の減災に大きく貢献できます。2021年にE-ディフェンスにおいて、機能維持性能の検証システムを用いた振動台実験を予定しており、1)から4)の研究項目を、具体的に実施します。研究を推進にあたり、産業界や防災関連機関(家具什器・非構造部材メーカー、公的機関等、約30機関)に研究会に参加いただいている。■非構造部材、家具什器による人的被害を軽減させる■地震後にも室内空間における機能維持をめざす■機能維持性能の検証システムの確立と標準化a)室内被害の画像解析(E-ディフェンス実験左︓原画像、右︓解析画像)b)平成28年熊本地震での負傷等の原因図1室内空間の機能維持のための検討内容

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