〒305-0006 茨城県つくば市天王台3-1 Tel 029-851-1611 Fax 029-851-1622地震被害予測と広域災害の早期把握災害過程研究部門 山崎 文雄2020.2.13 令和元年度 成果発表会■都市ライフライン・建物の地震被害予測手法の開発と社会実装■衛星・航空リモートセンシングによる早期被害把握手法の開発■現地調査・観測に基づく検証データの取得とアーカイブ化「地震被害の予測と広域災害の早期把握」を主たる研究課題に挙げている.具体的には,「①都市ライフライン・建物の地震被害予測手法の開発と社会実装」として,都市ガス供給システムの地震防災システムの開発を都市ガス事業者と共同して行っている.また,高速道路構造物や建物のフラジリティ関数を実被害データや推定地震動分布に基づいて構築し,これらは国や自治体の地震被害想定や地域危険度評価などに利用されている.首都圏レジリエンスの建物フラジリティ研究として,熊本地震の益城町の被災度認定調査結果に基づく木造建物の年代別被害関数を構築した.「②衛星・航空リモートセンシングによる早期被害把握手法の開発」としては,人工衛星や航空機に搭載された各種センサによる画像データを用いて,地震,津波,火山噴火,台風,洪水などによる被害を早期に把握する手法の開発とその実証性検討を行っている.とくに,合成開口レーダ(SAR)画像の2時期比較ないし,災害後画像プラス事前空間情報を用いた構造物の被害検出を科研費やCRESTで行っている.また,JAXAの大規模災害WGの委員として,災害時の衛星データ利用を検討し,災害国際チャータやセンチネルアジアにも協力している.「③現地調査・観測に基づく検証データの取得とアーカイブ化」としては,災害発生現場を調査し,現地写真やビデオ,GPSデータを取得し,②の検証データとして利用している.現地調査においては,UAV(ドローン)を用いた空撮も頻繁に行っており,GPSデータを付加することで3次元モデルの構築を行い,被災現場や構造物のデジタルアーカイブを作成している.2019年の台風15号,19号災害に関しては,千葉県,多摩川,長野県,茨城県などの現地調査を行った.また,過去の災害調査写真をデジタルアーカイブとして自然災害情報室に提供している.2時期航空レーザ計測データによる倒壊建物の抽出本研究課題のうち,「①ライフライン・建物の地震被害予測手法」は,事業者や行政による事前地震対策や発災直後の被害推定に用いられる.実地震による被災データやインベントリの収集が課題であり,木造建物に関しては日本国内の地域性の考慮が重要なテーマといえよう.「②リモートセンシングによる早期被害把握」は国際的に取り組まれているホットな課題であり,新しい衛星センサン登場や新たな大規模災害の発生によりデータが蓄積され,その有効利用が今後とも盛んになると考えられる.緊急観測データによる災害対応への利用と合わせて,結果の精度検証や利活用を進めるための方策の検討が必要であろう.「③検証データの取得とアーカイブ」に関しては,②の検証データとしての重要性が高い.また,自然災害情報室との連携を進めたい.
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