〒305-0006 茨城県つくば市天王台3-1 Tel 029-851-1611 Fax 029-851-1622蛇籠を応用した耐震補強技術の確立地震減災実験研究部門 中澤 博志2020.2.13 令和元年度 成果発表会■ノンエンジニアド住宅を対象としたジャケッティング工法の開発■情報発信・広報効果を兼ねたクラウドファンディングの活用■少なくとも命は守る減災技術(3L技術)の構築2015年のネパール地震における人的被害の大半は,山間部の自分で建設した石積の伝統的な家に集中し,道路事情が悪く建設資材の搬入が困難な状況もあり,復興が進んでいません.被害拡大の原因は,庶民住宅である組積造の脆弱性ですが,これら住宅の多くは地域の職人あるいは住民自身によって建設された技術者が関与していない“ノンエンジニアド建設”,いわゆるネパール版既存不適合住宅によるものです.被害軽減のため,まずは現地の住民がお金をかけずに自ら実施し得る補強方法を身につける必要があります.そこで,紀元前の中国で産まれた伝統的な土木技術である“蛇籠(じゃかご)”を応用した庶民住宅の耐震補強技術として,“ジャケッティング工法”を提案しました.蛇籠は金網籠に石を詰めただけの単純構造で高い技術力を必要としない一方,ネパール現地調査から金網の拘束効果により崩壊しない粘り強さが確認されています.本研究で提案する蛇籠によるジャケッティング工法は,庶民住宅を金網で巻き丸ごと蛇籠化する,住民自らが実施し得る耐震補強技術です.この研究が必要な理由は,国際的に構造研究が進んでいない分野であり,技術水準を整備する必要があります.この事実を広く知っていただくため,“情報発信・広報効果を兼ねクラウドファンディング”を活用し,振動台実験による効果検証を行いました.実験では,無補強とジャケッティング工法による石積み住宅の比較実験をしたところ,金網の拘束効果が非常に高く,壁は変形しましたが少なくとも,崩壊はしないことが確認できました.“少なくとも命は守ることができる”,この優れた特徴をジャケッティング工法として庶民住宅の耐震補強技術に活用し得ることが分かりました.クラウドファンディング,ジャケッティング効果検証実験を経て,蛇籠金網の効果確認試験までの流れ現在,効果的かつ合理的な金網の設置方法を検討するため,金網の力学特性を把握するための引張試験を実施し,金網の設置する方向によってもジャケッティングの効果が異なることがわかってきました.このような知見を活かし,設置方法の確立と,ネパール現地における実装へ向けた取り組みに活かしていきたいと考えています.最終的に,Low-Techを科学し,Low-Costを追求し,そしてLocalで活かす,“3L技術”として現地における普及展開を目的としています.
元のページ ../index.html#41