防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
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〒305-0006 茨城県つくば市天王台3-1 Tel 029-851-1611 Fax 029-851-1622防災チャットボットの研究開発国家レジリエンス研究推進センター  東 宏樹2020.2.13 令和元年度 成果発表会■国民一人ひとりに最適化された情報提供による避難等の支援■国民一人ひとりからの直接情報提供による網羅的な状況把握■大量の個別要望を自動処理、災害対応機関の業務効率化を支援政府をはじめ、地方公共団体や企業など、あらゆる災害対応を行う組織において災害直後の時間的・空間的な情報空白により、適切な意志決定がなされず最適なリソース配分が困難となっている。国民一人ひとりも災害時にあっては、自らが住んでいる場所に関する気象等に関する予報や予測といった利用可能な情報の解像度の粗さと考えるべきことの多さに戸惑う一方、避難行動の意志決定のための情報が適切に手元に届いておらず避難を躊躇し、逃げ遅れる場合がある。災害後の復旧復興対応において、自治体では、殺到する問い合わせにマンパワーをとられ、本来の災害対応業務に集中することが出来ない。また、避難所等で避難生活を送る人々のニーズを詳細に把握することが困難であり、物資の供給等において多くのムラ、無駄が発生している。そこで、1.災害対策本部における早期の被害状況把握、2.風水害等リードタイムを持つ災害時における住民の適切な避難行動の支援、3.復旧復興フェーズにおいて自治体が人手で対応する問い合わせ総量の削減を可能とする対話型災害情報流通基盤(防災チャットボットSOCDA)を開発している。これにより、数千万人規模のユーザに対しSIP4D等から得られる情報を用いた適切な避難行動の支援と、被災者の避難所生活等への情報支援が可能となる。また、災害対策本部等における早期の被害状況把握と、復旧復興フェーズにおいて自治体が人手で対応する問い合わせ総量の削減を実現する。実際に2019年台風15号における千葉県災害でのチャットボット対応件数は7059件で、従来の電話による応対の約1/5の労力と推計される。数字で見る防災チャットボットの達成度千葉県対応のケースではDISAANA,D-SUMMを通じて9月12日時点で建物被害2万棟越えの可能性ありと覚知した。さらに、対話を通じた確度向上と停電および通話不能エリアを情報空白地帯等から類推して抽出できる可能性もある。一方で、チャットボットによる情報収集には以下のような課題がある。1.チャットボットを通じて収集した情報、特に個人情報の取り扱い: 災害時の支援にあたって、病歴などの機微情報をどのように扱うかの問題。2.収集した情報の信憑性、正確性の担保: 収集した情報にデマが含まれたり、情報鮮度が落ちた結果、現状に合わないものが含まれる可能性。また、チャットボットによる避難・復旧支援情報の提供には、3.避難支援における情報発信の責任: 誤った避難支援情報を発信し、避難最中に被災した場合の責任の所在。4.避難・復旧支援情報の整備、充実: 必要な情報が整備されておらず、災害対応現場の情報収集/整備能力にも限界がある。

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