〒305-0006 茨城県つくば市天王台3-1 Tel 029-851-1611 Fax 029-851-1622火山現象の数値シミュレーション火山防災研究部門 藤田 英輔2020.2.13 令和元年度 成果発表会■火山現象の原因となるマグマを多相系(気液固相)としてモデル化■噴火/噴火未遂の判断基準の作成■火山噴火予知・火山リスク評価による対策方法を提案火山現象は地下のマグマの活動に起因し、その動きは地震・地殻変動・ガスなどの観測により把握される。マグマは気体・液体・固体が混ざった物質であり、その複雑な挙動を理解することによって噴火や災害発生の可能性を評価することが可能となる。このような複雑な現象をモデル化するためには数値シミュレーション技術が有効である。【地下におけるマグマ移動過程シミュレーション】地下のマグマは、自らの過剰圧や浮力がもととなり、周辺岩盤を破壊しながら岩脈(ダイク)として上昇する。初期の圧力や周辺岩盤の強度、さらには周辺の応力場によって、噴火するか、あるいは、噴火未遂で終わるかが決まる。粒子法により岩脈貫入による噴火・噴火未遂の条件を求めたところ、噴火に至るケースは、火山周辺が張力場にある場合のみに限られるとともに、初期過剰圧がその深さの静岩圧の10倍程度が必要であることが分かった(左図)。【地表における火山ハザードシミュレーション】火山ハザードは降灰・噴煙・溶岩流・噴石・泥流など多岐にわたり、これらを定量的に評価するための数値シミュレーション技術を開発している。例として、富士山噴火による溶岩流・噴石ハザードの評価事例を示す(右図)。溶岩流では、設定噴火口から溶岩の噴出レート、温度などを設定し、流下範囲、流速、温度等の情報提供が可能である。噴石では噴出時の粒径・噴出速度等を設定して、噴石の落下範囲・速度・軌跡・衝突時のエネルギーなどの情報が提供可能である。火山現象の数値シミュレーション例。左︓マグマ移動過程シミュレーション右上︓富士山北斜面溶岩流シミュレーション右下︓富士山噴石シミュレーションマグマ移動過程や火山ハザードの各シミュレーションを一元的に扱うとともに、観測データとの比較による活動推移予測に資するため、現象を支配するパラメータを体系化し、火山ハザードを高精度で評価可能なシステムを構築する。また、火山ハザードシミュレーションと暴露度・脆弱性を重ね合わせることにより火山災害の定量的なリスク評価が可能となる。噴石の場合は登山道や登山者の人流データとの重ね合わせにより、被害軽減のための避難路設定やシェルター配置の最適化などに適用可能である。最も広範囲に影響を及ぼす降灰の場合は、例えば富士山噴火における首都圏への降灰厚やその時間変化のシミュレーションをもとに、避難経路の確保、火山灰を捨てる場所、輸送車両や経路の確保、必要物資のロジスティクス計画の整備などの対策へと結び付ける技術を展開していく予定である。
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