防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
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〒305-0006 茨城県つくば市天王台3-1 Tel 029-851-1611 Fax 029-851-1622防災教育の推進/地域防災力向上支援マルチハザードリスク評価研究部門  浅尾 一已2020.2.13 令和元年度 成果発表会■自治体職員や住民への防災教育■自治体の地域防災力向上への支援■ハザード・リスク研究成果の広報・啓発我が国が「災害に強い社会」になるためには、国民一人ひとりの防災意識と災害対応能力の向上とともに、自治体の災害対応力の向上が必要不可欠である。そのためには、国民が地震や台風等の自然現象を正しく理解した上で、災害発生時に臨機応変な行動をとれることが必要であり、また自治体における災害予測システムの実装や職員の人材育成も重要である。中長期目標では、防災教育のための講師派遣や自治体等の訓練、人材の養成を支援することが明記されている。防災科学技術研究所は、本年4月から千葉県が設置した千葉県防災研修センターにおいて、防災研修プログラムの開発に協力するとともに、①市町村職員向けには「地震や台風等の自然現象の理解と対策を学ぶ講義」、②小学生向けには「液状化と津波のメカニズムを学ぶ実験講座」、「地震計の原理を学ぶペットボトル地震計の作成」、③中学生向けには「相模トラフ沿いの巨大地震による房総半島南端の変動地形や災害記念碑、避難丘の巡検」等を実施している。自治体の防災訓練では、防災科学技術研究所が開発した津波浸水予測システムやリアルタイム地震被害推定システムの推定結果を用いて、館山市の津波避難訓練やつくば市の危機管理対応訓練等に協力している。広報・啓発活動としては、九都県市合同訓練等にブースを出展し、地震津波や気象に関する研究や防災事業の説明等を来訪者に行っている。また、千葉県の防災体験学習施設である千葉県西部防災センターでは、親子向けの体験型実験等を実施している。例えば、子供たちが装置を振動させ液状化を発生させる実験を通し、親子で一緒に液状化のメカニズムや液状化対策等を理解してもらう試みを行っている。図1千葉県防災研修センターと防災教育の写真自然災害が多発する我が国で生活するためには、国や自治体が公表しているハザードマップ等を正しく理解した上で、防災リテラシーの向上が必要である。そのためには、子供や大人の分け隔てなく防災教育を地道に継続することが重要であり、少子高齢化と人口減少、都市への人口集中などが急激に進む社会構造変化も踏まえ、防災教育を戦略的に進めていく必要がある。今後は、バーチャルリアリティ技術や災害実例データを用いた新たな教材の開発を行い、災害発生時に最前線で対応する自治体職員や次世代を担う子供たちへの自然災害への理解をさらに深める実践的な防災教育を実施するつもりである。

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