〒305-0006 茨城県つくば市天王台3-1 Tel 029-851-1611 Fax 029-851-1622OpenTSUNAMI (杞憂プロジェクト)地震津波火山ネットワークセンター・地震津波防災研究部門・総合防災情報センター 近貞 直孝2020.2.13 令和元年度 成果発表会■隕石(杞憂)津波に備える■いつでも何処でも誰でも津波計算︓OpenTSUNAMI■任意の地点での津波評価には世界中の海陸地形が必要近年,望遠鏡の大型化やカメラ(CCD)の高感度化により,より遠方の,より小さな太陽系小天体(小惑星,彗星)が観測可能になってきた.その性能を生かして,地球に衝突する可能性のある小天体を早期に発見する,スペースガードプロジェクトが始められている.これまで4例の小天体が,地球衝突前にその衝突が予測され,実際に地球大気圏に突入している(小さいため,大気中で燃え尽きた).地球の表面は約7割が海で覆われている.すなわち,どこに落下するか分からない隕石は,7割の確率で海に落下することになる.もし,燃え尽きずにある程度の大きさの隕石が海に落下(衝突)した場合は,津波を生じさせる.しかし,現在の我々の知識では,衝突地点を予測することは出来ても,どの程度の津波が発生するのかを定量的に評価するための数値計算モデルは手にしていない.津波の数値計算には海底地形が必要だが,実は海の底は宇宙よりも分かっておらず,世界中の海のたった数%しか水深(海底地形)が正確には分かっていない.また,隕石による津波は局所的に発生する(短波長)ため,その伝播を正しく計算するための数値計算モデルも我々は持っていない.以上の問題を解決し隕石津波の即時予測を可能にするため,以下の2つの課題に取り組む.【1】世界中の海底及び沿岸の地形データを整備する.手作業では不可能なため,グローバルな衛星データを自動処理して地形データを作成するための研究開発を行う.【2】短波長津波に耐えられる数値計算モデルを研究開発する.津波浸水評価を行うため,2次元の数値計算モデルを改良しスパコン等で現実的な実行時間となるようにする.地球接近型小惑星の監視と隕石津波数値計算モデルの概要短波長の津波は,昨年インドネシアのパル湾を襲った津波のように海底地すべりによっても生じる.また,同じくインドネシアのクラカタウ火山の噴火によって生じた津波も,断層が数百kmに及ぶ地震よる津波に比べて遥かに短波長である.本研究は隕石衝突による津波(杞憂)を主題とするが,海底地すべりや海底火山噴火により生じる津波にとっても必要な要素技術の研究開発である.また,先進国では地図が整備されているのが当たり前で,陸域の浸水評価に用いることが出来る.一方で,発展途上国では沿岸域の地形が整備されていない場合も多く,衛星データに頼っている場合が多い.本研究にて,世界中の任意の沿岸地域の標高データを整備することで,これまで津波の評価がままならなかった地域についても津波浸水評価が可能になり,世界の津波防災力の向上に貢献することが出来る.
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