防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
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〒305-0006 茨城県つくば市天王台3-1 Tel 029-851-1611 Fax 029-851-1622免震建物の性能向上を目指して地震減災実験研究部門  岸田 明子2020.2.13 令和元年度 成果発表会■簡易な減衰力切り替え機構を有するパッシブダンパーを用いて免震建物の応答を低減する。■法で規定されるレベルを超える巨大地震動への対策免震建物は法で規定されるレベルの地震動に対して耐震安全性の高い構造形式ですが、法令のレベルを超える巨大地震動により免震層の変形が過大となり、免震材料の破断や座屈、擁壁との衝突、主要な構造体の損傷など設計上対応されていない事象が生じることが懸念されます。私はこれらの事象に対処するための付加減衰装置の研究を行っています。仕組みの単純さ・コンパクトさを特に目指した付加減衰装置として、既製品のオイルダンパーの接続部に長穴(ルーズホール)を設けることにより、免震層の応答変位と応答速度に応じて減衰力発生のオン・オフが切り替わる出力可変ダンパー(以下、オンオフダンパー)を提案し、その有用性を検討しています。オンオフダンパーの特徴これまでの研究では、水平1方向のみに地震動が作用する場合について検討してきましたが、現実の地震時における免震建物は水平2次元平面上を自由に動くため、今後は実建物を想定し、直交する水平2方向にオンオフダンパーを設置する場合を考えます。まず、オンオフダンパーを用いた免震建物の1方向振動に対する応答計算解析プログラムを2方向振動用に拡張します。オンオフダンパーを2方向に用いる場合、ダンパーに曲げによる力が作用しないようにしなければならないため、接合部において鉛直軸回りの回転を自由にする必要があり、接合部をピン接合とします。この場合、xy平面上のx方向に作用するオンオフダンパーのクリアランス長さがy方向変位の影響を受け、これを解析プログラムに組み込む必要があります。具体的には、x方向とy方向の時刻歴応答解析を各方向の変位とクリアランス長さの相関を考慮しながら同時に行います。更に、水平2方向に加振する振動実験を行い、解析プログラムの妥当性を検証します。振動実験を行うことにより、2方向加振時のオンオフダンパーの挙動を明らかにし、オンオフダンパーが滑らかな動きをするための治具やクリアランス金物の設計方法を確立したいと考えています。•既製オイルダンパーのピン支承部にルーズホールを設ける。•接続部分のみを変更するだけで比較的容易に製作可能である。•オンオフダンパーが性能を発揮するのは以下のとき lri≤0V>0または lli≤0V<0既製品のオイルダンパールーズホール金物

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