防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
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〒305-0006 茨城県つくば市天王台3-1 Tel 029-851-1611 Fax 029-851-1622グローバル・モザイク・モデル■四川大地震への取り組みがきっかけで日中韓の3カ国による戦略的国際科学技術協力推進事業(2010-13年)を行った.■日本(NIED)・台湾(TEM)は10年間,日本・ニュージーランド(GNS Science)は6年間にわたって協力関係を続け,地震ハザード評価(SHA)共同研究を行っている.■2012年9月に防災科研は日本の公的機関の代表として,Global Earthquake Model(GEM)運営委員会メンバーに正式に加入し,現在第2期に至っている.約9万人が犠牲となった2008年中国四川M=7.9大地震が発生した直後に,防災科研では現地調査を実施した.それに加えて,陸域観測技術衛星「だいち」のデータを用いて,長さ300kmに及ぶ長大断層の形状と断層面上のすべり分布などの地殻変動を逆解析により推定し,大震災を引き起こした断層の全貌を明らかにした(Haoetal.,GRL2009).これらの取り組みがきっかけとなり,日中韓の戦略的国際科学技術協力推進事業(研究交流型)として,「次世代地震ハザードマップ作成のためのハザード評価手法の高度化に関する研究」が2010~2013年にわたって実施された.研究交流は2011年ハルビン,2012年済州島,2013年仙台の研究会合などを通じて行われ,日中韓の3カ国での地震ハザードモデル作成の経験と知識の共有が進められると同時に,共通の課題を洗い出し,協力して研究を進めることにより各国のハザードマップの高度化に資するものとなり,東アジア地域における地震ハザードマップ作成技術の情報共有の第一歩が拓かれた.写真︓2019年11月洞爺湖G-SHAサミット会議, 米国USGS・イタリアGEM・韓国・シンガポールの専門家も参加し,熱心に発表・討議を行いました.約2万人が犠牲となった2011年の東日本大震災では,地震ハザード・リスク評価に関して多くの教訓が得られ,それらを国際的にも共有することが重要であるとの認識が高まった.GEMは,全世界を対象として地震によるハザードおよびリスクを評価するための透明性の高い評価システムの開発とそれらに必要な地震に関するデータベースの構築を実施している.GEMが進める国際的な地震ハザード・リスク評価手法の開発とその標準化に直接寄与し,国際化を図ることは,日本でこれまで取り組んできた地震ハザード評価手法を国際的に展開するよい機会となり,国際的な貢献が期待できることから,防災科研は,GEMの活動へ参画することとなった.こうして,2012年9月に防災科研は日本の公的機関の代表として,GEM運営委員会メンバーに正式に加入し,GoverningBoardメンバー,および科学委員会ScienceBoard副議長として貢献してきた.GEMは2018年12月に地震本部2014年版の地震ハザード評価モデルを入れた「グローバル・モザイク・モデル」を発表行った.これは硬い地盤(800m/s)の地震動評価であるが,世界初のデジタル地震動評価図である(図).防災科研では,地震調査研究推進本部が作成する「全国地震動予測地図」の作成手法の研究を行い,手法の高度化や関連するデータの整備・公開を実施してきた.これらの経験を国際的に発信し,国際的な地震災害軽減に貢献するため,2012年よりGEMに参画し,特に,東アジア地域を中心に活動を行ってきた.今後も,近隣諸国との連携を図りながら,災害の軽減を目的として地震ハザード・リスク評価手法の高度化を目指し,アジア地域の特性を踏まえた評価モデルの構築を継続する予定である.日本において培われた地震ハザード・リスク評価に関する研究成果が,国際的な組織であるGEMを通じて世界に向け発信されることを期待したい.「災害ハザード・リスク評価手法などの防災科学技術の国際的な標準化や海外展開を推進する」という防災科研(NIED)が掲げた中期目標に沿って,十二年にわたり,活動を続けてきた.約2400人が犠牲となった1999年の台湾集集大地震後,台湾においても地震ハザードマップ作成の重要性が研究者・専門家の間で再認識され,地震ハザード評価の専門的な研究を進め,台湾の各国立大学と中央研究院などを連携するTaiwanEarthquakeModel(TEM)が設立され、2012年から防災科研との研究交流が始まった.ニュージーランドも地震が多発する国であり,地震研究が進んでいる.ニュージーランドにおいては,GNSがニュージーランド全土を対象とした地震ハザードマップを作成している.これら3カ国は太平洋プレート境界において類似した地震環境を持つ島国であり,地震ハザード研究において共通する課題も多く,3カ国が協力して研究を進めることによるメリットが大きいことから,2014年から日本・台湾・ニュージーランドの共同研究が始まり,2014年に台北,2015年にウェリントン,2016年には別府,2017年台南,     2018年にNZオアマル市,2109年洞爺において研究交流会を開催した(写真).図︓2018年12月GEMが発表したグローバル・モザイク・モデル.今後50年以内に10%の確率に見舞われる基盤(Vs = 800m/s )の最大加速度(G)PGA(g)日本地震ハザード評価と国際推進のリーダーシップマルチハザードリスク評価研究部門  郝 憲生 はお2020.2.13 令和元年度 成果発表会

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