防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
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フィリピン海プレートの凹凸と 深部低周波微動活動地震津波火山ネットワークセンター/地震津波防災研究部門  汐見 勝彦2020.2.13 令和元年度 成果発表会133.5˚E134.0˚E134.5˚E135.0˚E33.5˚N34.0˚N34.5˚N浅い側深い側•四国東部下のプレートに小さな凹凸が存在することを発見•複雑な深部低周波微動活動とプレートの凹凸に空間的な相関•精緻なプレートモデルは、精度の高い強震動予測等に不可欠発生が懸念されている南海トラフ巨大地震は、南海トラフから西南日本の下に沈み込んだフィリピン海プレートと陸側プレートとの境界を震源として発生します。この地震の発生予測や揺れの特徴をあらかじめ把握するためには、フィリピン海プレートが、どこにどのような形で存在し、陸側プレートとどのように接しているかを詳細に知ることが重要です。防災科研が運用するHi-netやF-net等の観測施設で得られる地震波形には、観測点下の地球内部構造に関する情報が含まれています。右の図は、観測された膨大な地震波形記録からフィリピン海プレートに関する情報を抽出し、各観測点の下でフィリピン海プレートが傾いている方向を推定した結果です。フィリピン海プレートは南海トラフから沈み込んでいるので、南海トラフから遠ざかる方向に深くなることが予想されます。実際、高知県では南東方向が浅く、北西方向が深くなる様子が確認出来ました。一方、徳島県北部では、南海トラフがある南方に向かって傾き下がっています。これは、香川・徳島県境付近のフィリピン海プレートに局所的な「高まり」があることを意味しています。この高まりの南麓は、深部低周波微動と呼ばれる微弱な振動が発生している場所に合致しており、微動活動とプレートの形が強く関係することが想像されます。深部低周波微動活動は、南海トラフ巨大地震と密接に関係していると考えられています。今回、陸域下で初めて観測に成功したプレートの凹凸は、想定される南海トラフ巨大地震の震源を評価するうえで重要な情報となります。四国東部におけるフィリピン海プレート内海洋モホ面が傾き下がる方向の分布。矢柄側が浅く、矢先の方向に傾いている。黒点は解析対象とした観測点の位置を、灰色の点は深部低周波微動の震央位置を表す。矢印が付記されていない黒点は、傾く方向を安定して求めることが出来なかった観測点を表す。本研究では陸域下のフィリピン海プレートが傾き下がる方向を推定しました。これにより、空間的な形状の概略を想像することが可能になりました。今後は、これにプレートの深さの情報を付加し、精緻なプレート形状モデルの構築を行うとともに、解析対象を南海トラフ全域に拡大していきます。こうして得られたプレートモデルと通常の地震活動、深部低周波微動活動との空間的な関係から、なぜ過去の多くの事例では「東海地震(東南海地震)」と「南海地震」に分かれて発生してきたのか、どのような条件で両方の領域を同時に破壊する巨大地震に発展するのかを検討していきます。また、構築した精緻なプレートモデルは、強震動予測や地震活動推移予測の高度化につながります。その結果は、持続可能な社会へと導くための対策に活用されることが期待されます。徳島県北部︓南~南西傾斜徳島県南部︓ほぼ平坦︖高知県東部︓北西傾斜愛媛県東部︓西南西傾斜香川県︓西傾斜

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