〒305-0006 茨城県つくば市天王台3-1 Tel 029-851-1611 Fax 029-851-1622活断層近傍地震ハザードマップにむけてマルチハザードリスク評価研究部門 岩城 麻子2020.2.13 令和元年度 成果発表会■活断層近傍のリスク低減に資する“ハイレゾ“ハザードマップを目指す■断層周辺の地盤構造と断層位置形状の詳細モデルの取り込み■2016年熊本地震の断層ごく近傍地震動の分析と事後予測防災科研では地震調査研究推進本部による「全国地震動予測地図」の作成と,プラットフォーム「J-SHIS」上での予測地図やその基盤情報の整備・公開を継続して行っている.この中で全国の主要活断層帯に対してそれぞれ想定地震発生時の断層周辺域における強震動予測を行っている(想定地震地図).2016年熊本地震は,主要活断層帯である布田川・日奈久断層帯を主な震源として発生した.この地震では数10kmにわたり最大2m程度の地表断層変位が現れ,断層周辺の一部では強い揺れによる集中的な建物被害がみられたが,従来の強震動予測手法では地震規模や断層近傍強震動の予測として不十分であったことが明らかとなった.また,想定地震地図で「想定」されていたにもかかわらず,断層周辺の住民や事業者には「想定外」の地震災害として受け止められた部分もある1).1)例えば,熊本県企業誘致連絡協議会, 2017.個々の断層に対する想定地震地図の意義の一つは,断層周辺においてハザード評価に応じた適切な防災対策がなされ結果として地震リスクが低減することにある.その本来の目的に資するため,より断層近傍にフォーカスし地表断層形状を考慮した強震動予測手法やハザードマップの刷新を検討している.【地図】強震動計算用断層モデル(矩形)と地表断層観測位置(赤丸).地表断層形状と観測された変位量を断層モデルの浅部地表付近部分に組み込む.都市圏活断層地図2)と断層近傍に集中する建物被害分布を重ねている.【グラフ】片側2mの変位量を観測した地点を通り断層をまたぐ南北則線上の計算地震動による地表変位量の分布の例.断層モデル設定の違いにより断層近傍の計算結果が大きく異なる.2) 熊原・他,1:25,000活断層図「熊本改訂版」, 2017.〇他の活断層帯への適用における予測問題としての課題➡活断層位置形状・活動履歴情報,および特に地表付近の断層破壊の物理的知見を強震動予測モデルに取り込む(分野を超えた共同研究の必要).また,モデルの不確実さに伴う予測地震動の不確定性の定量的評価を進める.〇断層モデルの刷新︓断層の位置形状は断層近傍のリスクに直結する(どこで地盤が変位するか,どこで強く揺れるか)ため活断層調査や変動地形学の知見も踏まえ詳細にモデル化する.〇活断層周辺の地盤モデルのアップグレード︓断層運動に起因する地溝帯などを含む複雑な地盤構造をモデル化し取り込む.〇強震動予測手法の高度化︓詳細なスケールでの断層ごく近傍地震動計算のため,地表に達する断層破壊の運動学的モデルと地震動数値計算手法の高度化を検討.2016年熊本地震を対象とした検討から始めている.〇断層近傍地震リスク低減に資するハザードマップの作製➡主体(自治体,事業者等)に合った空間スケール・情報量の揺れや地表変位量に関する“ハイレゾ”(高解像度)ハザードマップを提供する.そのための情報基盤の整備・開発を行う.
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