防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
80/144

配管系の耐震設計手法の高度化地震減災実験研究部門  中村 いずみ2020.2.13 令和元年度 成果発表会■プラント等の配管系を対象に、地震時の損傷挙動の把握と合理的な耐震性評価の実現を目指しています。■令和元年度は、原子力発電施設の配管系について、新しい耐震設計手法をまとめました。発電施設や化学プラント等の主要な構成要素の一つに配管系があります。地震で配管系が損傷し内部の流体の漏洩や流路閉塞が発生すると、施設が必要な機能を果たせなくなったり、漏洩したものによっては施設周辺に危害が生じたりするおそれがあるため、重要度の高い配管系に対しては弾性解析に基づく耐震設計(弾性設計)がされています。一方、国内外で実施された実験などの知見から、実際の配管系は設計の想定を超えても弾塑性領域に大きな裕度があることがわかってきました。近年、設計で想定するべき地震動が引き上げられたり、設計の想定を超えた場合の施設の健全性や裕度の評価が必要になったりしていますが、現在の設計体系だけでは、配管系の弾塑性領域の性能を評価・活用できていない。弾性設計に基づく評価と実際の地震被害が対応しない。設計の想定を超えた荷重が作用した場合の損傷の進展が分からず、「危険な被害モード」が分からない。また、設計に対する裕度が分からない。配管系の実態挙動を反映していない現行の設計・評価体系では、適切な耐震対策が採りにくい。というような問題点が認識されています。そこで、配管系の耐震信頼性を向上させるため、•過大な地震荷重が作用したときの実態挙動の把握•実態挙動を踏まえた合理的な耐震設計手法の確立を目的として研究を行っています。防災科研では、これまでに振動台を活用して現在の耐震設計で考えられるよりも大きな地震入力を与え、配管系の実態挙動の把握と限界強度を調査してきました。配管系には配管継手(曲管や分岐管など)、支持構造物などが含まれます。長期の使用で劣化の発生も考えられます。今後は、そのような複雑な問題を含む実験および解析を行い、実態挙動の解明と耐震信頼性の向上に努めたいと思います。また、地震時の配管系の被害モードを同定することで、効果の高い対策の提案、影響度の小さい損傷を先行させるような復旧性を踏まえた耐震性評価手法の提案などに展開したいと考えています。それらの研究から得られた知見をもとに、平成26年より、配管系の耐震設計に弾塑性解析を用いる新しい設計手法をまとめる活動(*)に着手しました。その成果が、令和元年6月に日本機械学会より事例規格として刊行されました。(*)日本機械学会発電用設備規格委員会原子力専門委員会[耐震許容応力検討タスクフェーズ2]として活動これまでに防災科研で実施した配管系の耐震実験で得られた損傷事例疲労き裂の貫通

元のページ  ../index.html#80

このブックを見る