学校教職員の防災力向上研究災害過程研究部門 池田 真幸2020.2.13 令和元年度 成果発表会■石巻大川小学校津波訴訟で事前対策の過失認める判決が確定■防災科研は研究成果や実践事例を学べるWebサービスを提供■教育委員会・教育大学と連携し教員研修プログラムを開発中津波により児童74人、教職員10人が犠牲となった石巻市の旧大川小学校の遺族らが起こした裁判で、学校と行政の事前防災対策と災害時の対応の過失を認める判決が、2019年10月11日に確定しました。全国の学校教育現場ではより一層の防災対策の知識と実践が求められています。防災科研ではこれまで、小中学校を拠点とした防災マップづくりによる災害リスクコミュニケーション手法を提案してきました。この手法では、専門知・経験知・地域知の統合による災害リスク認知の強化と共通認識の効果が確認されました。しかし手法の高度化により実践のハードルが上がり、全国的普及に課題がありました。一方で、防災科研では「地域防災Web」の研究開発を進めてきました。2018年から試験的に公開運用を始め、自治体や地域組織における災害リスク情報の利活用促進を進めてきました。そんな中、大川小学校事故の教訓もあり、学校教育の現場で地域防災Webを活用したいという声が高まり、小学校区単位の災害リスク情報を簡単に取り出せるようシステムを改修しました。地域防災Webに自校区を登録することで、校区の災害リスクを災害種別横断的に見ることができます。加えて、災害リスクコミュニケーションに役立つ地図資料を簡単に作成できるよう、データパッケージを構築しました。2019年には、宮城県と徳島県で、地域防災Webを活用した教員研修を開始しました。これらの取り組みを検証し、教員研修プログラムの開発を進めています。また、研修に参加した教員からより多くの他校の実践事例を知りたいという声が多く聞かれたことから、防災教育チャレンジプランや都道府県教育委員会等から先進的な実践事例を収集し、地域防災Webに登録する取り組みも並行して進めています。左︓防災科研が提案する「防災マップづくり」手法における専門知・経験知・地域知の統合に基づく災害リスクコミュニケーション中︓「地域防災Web」で閲覧できる学校区の災害リスクの横断評価と、災害リスクコミュニケーションに役立つ地図資料の一例右︓宮城県と徳島県における地域防災Webを活用した教員研修の様子学校教員等を対象とした防災教育研修プログラムの研究開発を進める予定です。また、文部科学省学校安全総合支援事業とも連動し、これらの研究成果を全国に拡げていきます。2019年4月には、国立宮城教育大学に防災教育研修機構(311いのちを守る教育研修機構)が設立されました。防災科研は機構と連携し、全国の津波防災対策が必要な地域の
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