高層建築物等の地震応答モニタリングマルチハザードリスク評価研究部門 大井 昌弘2020.2.13 令和元年度 成果発表会■高層建築物における長周期地震の地震応答モニタリング■地震応答観測のための地震計の開発■学校校舎の地震応答観測と防災教育への活用現在、都市部に集中している高層建築物については、東北地方太平洋沖地震で観測された長周期地震動や熊本地震で観測された長周期パルス等の発生による躯体損傷等が危惧されており、今後想定される首都直下地震や南海トラフ地震への備えのためにも、本研究は我が国の喫緊の課題の一つである。高層建築物等の地震応答を手軽に観測できるようにするには、ネットワーク等の配線不要で安価な地震計とクラウドから構成される地震観測システムの開発が必要であるため、平成年度より、株式会社近計システムと共同研究「高層建築物等の地震応答モニタリングに関する研究」を実施している。本共同研究では、低ノイズ密度25μG/√、低消費電力200μA、内蔵の軸加速度センサである加速度センサ(アナログデバイセズ社)を用いて、従来のサーボ加速度計による地震計に対して、安価で小型化した地震計(図1)を開発するとともに、高層建築物等の地震応答モニタリング観測への適用を実施している。地震計は、計測震度計として気象庁の検定を取得している平成年月から、千葉県内の高層建築物に地震計によるモニタリングシステムを構築しており、月日時分に発生した福島県沖を震源とする地震(、深さ㎞)を観測している(図1)。高層階の観測波形は長周期成分が卓越しており、図1に示すように卓越周期は約秒である。この高層建築物の次固有周期は約秒となっており、共振していることがわかる。図1地震計を用いた高層建築物の地震応答モニタリングの観測例中長期目標では、災害リスクの低減に向けて、観測・予測研究及びハザード評価研究と一体で、災害の未然防止、被害の拡大防止から復旧・復興までを見据えた研究開発の推進が求められている。本共同研究では、地震計とクラウド間に無線を用いることによって、配線不要で安価で簡単に建築物のモニタリングシステムの構築を可能にした。今後は、既存の高層建築物や学校校舎等の実耐力や振動特性に基づいた最適な耐震改修を可能にするため、観測と解析に基づいた研究を実施する。また、地震観測システムを学校校舎に実装して、学校校舎の地震応答モニタリングに関する実証実験を行うとともに、学校関係者と協力して地震波形等を活用した防災教育を実施する。MEMS地震計LTE/3Gクラウド地震観測システム高層建築物の地震応答モニタリング約2.3秒
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