防災科学技術研究所 令和元年度成果発表会 概要集
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日本列島内陸の原位置地殻応力測定 -防災科研岩石コアへのコア変形法の適用-地震津波防災研究部門  小村 健太朗2020.2.13 令和元年度 成果発表会■防災科研岩石コアを利用。■原位置地殻応力測定手法としてのコア変形法を適用。■日本列島内陸の原位置地殻応力を推定する方針。地震発生過程やテクトニック変動を理解する上で、地殻の原位置地殻応力(絶対応力)が最重要な要因であるが、そのデータは、陸域においても乏しい状況にある。本研究では、原位置地殻応力測定法として「コア変形法」を全国各地で採取された既存の防災科研岩石コアに適用し、原位置地殻応力の測定を試みた。コア変形法は、コア採取後のコア断面の応力開放にともなう楕円状の弾性変形を計測し、岩石の弾性定数とあわせて、原位置地殻応力を算出する。岩石コアが方位づけされていれば、応力方位もわかる。今回、防災科研の深度が100m~200m~2000mから採取した硬岩の岩石コアを利用し、Funatoand Ito (2017, IJRMMS)で設計された装置でコア外周にそった直径を測定した。無定方位の岩石コアのため、応力方位の測定はできなかった。測定された岩石コアは、採取後、10年以上経過したものではあるが、外周にそって直径がサインカーブ状に変化し、岩石コア断面が応力開放にともない楕円状に弾性変形していることを示し、コア変形法が適用可能であることがわかった。一方で、堆積岩コアのように、明確に層理面がある場合には、層理面に相対した楕円状の断面形状が計測され、岩石コアの性状を考慮する必要があることがわかった。地殻応力値を算出するため、岩石コアの弾性定数は、直接岩石試験によるデータがある場合はそれを適用し、ない場合は、同じ孔井で実施されたPS検層による地盤のP波速度、S波速度から、密度を仮定して計算される弾性定数を適用することを試みた。これにより、既存岩石コアにコア変形法を適用して、広域的に原位置地殻応力を測定できる見込みのあることが示された。(左図) コア変形法の原理。円形状のコア断面が、コア採取後に応力開放にともない楕円状に弾性変形する。その変形量から原位置地殻応力を求める。(右図)コア外周に沿ったコア直径の計測例(群馬県利根、深度202.6m)。外周にそって直径がサインカーブ状に変化し、岩石コア断面が楕円状に変形していることを示す。○既存の岩石コアで、時間が経過していても、断面が楕円状に変形している状態が保持されており、コア変形法により、原位置地殻応力が測定できる。○コア変形法により推定された原位置応力と既存の原位置応力データとの定量的な整合性の確認が必要。○過去に採取された防災科研岩石コア(観測井コア等)に適用することで、限られた地点ではなく、広域にわたり、原位置地殻応力データが得られる見込みがある。○原位置地殻応力データが増えれば、GNSSデータ、地震データを組み合わせた、地殻内の応力分布と、応力蓄積・解放のモデル化に有効であろう。Circumferencialazimuth, deg0 360Radius, µm63.30063.35063.40063.450020406080100120計測時間1, secSHmax水平最大主応力SHmaxShminShmin水平最小主応力dmaxdminCore0

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