雷の3次元観測が拓く雷予測技術-1秒でも早い予測、1分でも早い避難を支援するために-水・土砂防災研究部門 櫻井 南海子2020.2.13 令和元年度 成果発表会•日本初︕高精度なトータル雷の連続観測。•企業との共同研究で、新しい雷危険度予測システムを開発中。日本における雷による被害は、年間数名が落雷が原因で命を落とすほか、2次被害を含めた被害額は2,000億円にものぼると推計されています。高精度な雷情報のニーズは高く、求められている雷情報は、長いリードタイム・高い適中率・高精度な観測情報です。雷は、雷雲から地面に落ちてくる落雷と雲内で発生する雲放電があります(双方の雷を総称してトータル雷という)。雲放電は、落雷より圧倒的に多く発生し、また、落雷に先行して発生することが多いです。しかし、日本の雷観測では雲放電の観測精度が低いため、その実態はまだ明らかにされていません。そこで、気象災害軽減イノベーションセンターおよび水・土砂防災研究部門では、トータル雷の放電経路を3次元的に観測できるLightning Mapping Array (LMA)と呼ばれる雷観測測器を首都圏に導入し、雷3次元観測を開始しました(右図)。LMAとMPレーダを組み合わせて、発雷指標の高度化に取り組んでいます。MPレーダは従来レーダと違って、降水粒子の形状や相の状態を推定できます。この利点を活かして、雷発生に重要な降水粒子情報を抽出し、従来の発雷指標よりも高精度な発雷指標を開発しました(右図)。開発した発雷指標やLMAの観測データを公開・配信する準備も同時に進めています。例えば、中電CTIとは、雷危険度予測システムを開発中であり、先述の発雷指標をシステムに搭載しました(右図)。LMAを軸とした雷情報の発信までのフロー①LMA更新時間の短縮化現在、LMAはデータを観測してからWEB上に表示するまでに5分程度要しています。LMA観測データを秒単位の遅れで取得する機能を追加し、LMA更新時間の短縮化を進めます(LiveLMA)。②LMA雷ナウキャストの開発現在は、MPレーダを用いた発雷指標の高度化にLMAデータを用いていますが、今後は、LMAで観測した雷データを用いた雷ナウキャストを開発します。また、雷危険度予測システム等の表示システムに追加していく予定です。今後は、LMAを用いた雷ナウキャストを開発し、その情報を搭載するなど、表示やプロダクトの充実化を図りたいと考えています。雷3次元観測例LMAセンサー雷危険度予測システムMPレーダを用いた発雷指標の開発観測・発雷指標の開発③LMA雷情報の提供先拡大へLMA雷情報(過去~現在)をHPから見られるよう整備しました(パスワード付き)。今後は、LMA雷情報の利用方法および利用者の拡大を目指して、プロダクトを増やしていく予定です。④配信システムの充実化今後、LMAデータや関連プロダクトの受信希望者が増えることが予想されますので、データ配信システムの充実化を図りたいと考えています。落雷位置橙色︓発雷指標によって発雷と判定された雨雲域。青色︓発雷指標によって発雷なしと判定された雨雲域。楕円︓雨雲域の30分後の位置。
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