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Published by E-Defense,NIED,January 25,2018,Vol.13 No.4
地震被害のVR体験も!-研究開発成果を文部科学省にて展示-
 私たち地震減災実験研究部門・兵庫耐震工学研究センターでは、「社会基盤の強靭性の向上を目指した研究開発」プロジェクト(強靭性向上PJ)を推進しています。このプロジェクトをはじめ、これまでのE-ディフェンスを活用した研究開発成果を発信するため、文部科学省新庁舎(東館)2階のエントランススペースを利用させていただき、『地震でゆらす・建物をこわす』と題してE-ディフェンス実験映像の放映などの展示を、2017年11月1日より12月25日まで行いました。エントランススペースでは、震度6強や7の巨大地震が引き起こす建物の破壊や室内被害の現象を再現したE-ディフェンス実験映像の放映とともに、それらの実験に基づく研究開発成果のポスター、E-ディフェンス模型を展示しました。
            
エントランス 展示ブース
文科省エントランスの様子   展示ブースの様子

 展示に関連して、地震時の室内被害を仮想現実(VR)によって視覚・聴覚で体験するイベントを、旧庁舎1階の情報ひろばラウンジ にて12月22日に開催しました。
VR体験を提供するシステムは、山下拓三主任研究員が中心となって研究開発を進めている「見える化」の取組の一つであり、E-ディフェンス実験で再現した地震被害の様子の全天球映像を作成し、ヘッドマウントディスプレイで再生します。このシステムを用いて、様々なイベントにおいてこれまでに400名を超える方々に地震被害のVRをご体験いただきました。
 今回のイベントでは、2015年に実施した10階建鉄筋コンクリート造建物のE-ディフェンス実験の際に収録した10階室内被害のVRコンテンツを、約70名の方々にご体験いただきました。また、VR体験と併せて、梶原浩一部門長、井上貴仁副部門長、佐藤栄児主任研究員、山下拓三主任研究員が分かり易い解説を加えて、VR体験者の地震被害や対策に対するご理解を更に深めていただきました。

説明 VR体験
説明の様子   VR体験の様子
        
 地震減災実験研究部門では、学術論文、報告書等の発表、E-ディフェンス実験のデータ・映像の公開に加え、成果発表会や防災技術展等のイベントへも積極的に参加することにより、研究開発成果の発信・普及促進と共に、様々な方々からのご意見・ご提案の業務への反映に努めています。
 平成29年度は、防災科研の一般公開(つくば)、震災対策技術展(大阪)、公益社団法人日本青年会議所サマーコンファレンス(横浜)、兵庫県丹波地域合同防災訓練(篠山)、防災フェアin高槻(高槻)、神戸市すまいとくらしの安全・安心未来展(神戸)、ぎゅっとぼうさい博(東京)などにおいて部門・センターの職員が準備・現地対応に携わり、成果の展示・説明やVR体験イベントを行いました。
 なお、今回の展示・VR体験イベントの開催にあたり、文部科学省研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室の方々にご指導・ご協力をいただくと共に、防災科学技術研究所企画部広報課にご支援・ご対応をいただきました。ありがとうございました。
 
              (文責 主任研究員 田端 憲太郎)

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韓国浦項地震被害調査報告
  2017年11月15日14時29分に発生した、浦項地震(ポハンじしん)のリヒターマグニチュード(ML)は5.4で、韓国の国内で発生した地震としては2016年9月に起きた慶州地震(ML:5.8)と並び観測史上最大級の地震です。 震央は慶尚北道浦項市北区興海邑(フンヘウプ)の北東約2 km、震源の深さは約9kmで(図1)、韓国の気象庁が推定した最大改正メルカリ震度はVI(アメリカ地質調査所はVII)です。また、今回の地震は慶州地震の震央から北東に約40kmの位置であることから、慶州地震を起こした梁山(ヤンサン)断層帯と関連があるという見解もあります。 当方は11月18日から22日まで現地で浦項地震による建築・土木構造物の被害の現地調査と、ヒアリング調査を行いました。その調査について、以下のようにまとめます。
堆積層で起きた逆断層型直下地震
浦項地震の規模(マグニチュード)が慶州地震より小さいですが、建築・土木構造物の被害が大きくて、被災者の数も多いです。その理由としては、1)浦項地震は慶州地震より浅いところで発生したため、地表面付近では比較的 に強い振動が発生したこと。 2)震源地(浦項市北区興海邑)周辺には大きい川が流れており、堆積層が比較的に発達した地域であることから、地震波が増幅され3~5階の低層ビルを中心に地震被害が大きくなったこと。3)震央地周辺の人口密集度が慶州地震(農村地域)より浦項地震(小都市)が高かったことです。 震源地付近の調査では液状化(地震で地下水と土壌の砂層が混じり、泥沼のように軟弱になる現象)の跡を確認しました。(図2)
旧基準で建てられた住宅
韓国では1988年より6階以上及び延べ面積10万m2以上の建物に対する耐震設計が義務化されていますが、それ以前には耐震設計の規定がありませんでした。今回地震で大きく被害を受けた興海邑は、昔からの町で1988年以前に建てられた古い建物が多かったです。特に、旧基準で建てられた組積造2階住宅と中層鉄筋コンクリート造共同住宅の被害が大きく、共同住宅はGL部の部材の損傷が多く見られました。(図3)
構造物の安全性に関わる不確定性
耐震設計においては、地震によって構造物を構成する各部材に生じる力(外力)を計算し、この外力を部材が耐えられる力(耐力)が十分にあるように部材を設計します。しかし、外力には未確認の断層および地盤等による不確定性、耐力には材料品質などによる不確定性と、施工や構造計画と関係がある技術者の耐震に関する認識論的不確定性があります。この不確定性は構造物の安全性に及ばす影響は大きいです。 すなわち、耐震設計ルールに従って部材を設計しても、必要な耐力をもっていない建物になって崩壊することもありますし、設計レベルを超える地震が来て崩壊することもあります。今回の地震で被害を受けた建物には、耐力を低下する耐震基準に反する施工、低強度コンクリートの使用、耐震計画に反する構造計画等がよく見られました。(図4)すなわち、上記の不確定性と関係がある被害が多かったのではないかと考えますので、不確定性を考慮した耐震設計方法が必要であると思います。

                   
最大加速度 液状化の跡
図-1 最大加速度
http://www.kyoshin.bosai.go.jp/kyoshin/
図-2 液状化の跡
GL部の部材損傷 傾いた建物
図-3 GL部の部材損傷と傾いたマンション(DAESUNG APT.)
低強度コンクリート 施工不良
図-4 低強度コンクリートを使用した学校と施工不良のマンション(耐力不確定性)
最後に、本被害調査にご支援頂いた方々に心より御礼申し上げます。

            (文責:研究員 姜 在道)
       

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