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Published by E-Defense, NIED,July 15,2020 Vol.16 No.2
令和元年度地盤工学会論文賞を受賞して振り返ってみたこと
 「あれから4年も経ったんだ。」今回の受賞を機に振り返ってみて、まず、頭をよぎった言葉です。改めて時間の経過を感じ、また、その経過の早さも実感しました。今回、執筆させていただく内容は、「令和元年度地盤工学会論文賞受賞」ですが、この始まりである実大実験を回想しながら、これを主に順を追って説明していきたいと思います。
 受賞した論文は、Seismic Performance of Small Earth Dams with Sloping Core Zone and Geosynthetic Clay Liners by Full-Scale Shaking Table Testsというタイトルですが、兵庫県との「ため池堤体の耐震安全性に関する実験研究」プロジェクトに神戸大も加わった組織体制の下、2016年1月にE-ディフェンスで実施した実大実験から得られた成果を取りまとめたものです。前年2015年の夏に前任の谷研究員(現日本海洋大学教授)より引継ぎがあり、実験に主体的に携わらせていただきました。本研究は、今後のため池の整備に向け、新しい材料として遮水シートを用いた堤体の改修方法の確かさを検証するために行われました。
  当時を思い起こすと、実大実験に供する土槽(写真1)の仕様、製作期間とそれに見合う予算で苦労した記憶がよみがえります。地盤・土構造系(堤防・盛土や擁壁のことです)の実験は、耐震化対策等の検証したい技術の定量化に無対策との比較が必要です。当時、ため池堤防の耐震実験における大きな課題と対応は、次の四項目でした。一つ目は、無対策と対策ケースをそれぞれ一回ずつ計2回か、一回の実験で無対策・対策の二つのケースを一度に実験するかでしたが、比較実験という見た目のわかりやすさで後者を選択しました。二つ目は堤防のサイズでしたが、兵庫県内のため池を調べ標準的な堤高3mの断面での試験体を設計しました。三つ目の課題は土槽製作で最もハードルが高いものでした。堤高3mの試験体2体を同時に実験可能な土槽を製作すること、ため池を再現するための大量の水を使用しますので、土槽の水密性と実験時の安全性の確保でした。結果的には、同じ土槽を二つ設計・製作し、水の課題もクリアすることができました。最後は、実験時の加振条件の設定で、大量の水を要する実験の経験が無かったことから、少なくとも実際のため池で起こらないであろうスロッシング(水面揺動)を避ける条件で実験を行いました。このように、すべてにおいて手探り感にあふれる中、研究活動の多くは実大実験に至るまでの課題解決が主であり、非常に重要であったと感じています。

  加振前の試験体全景  
  【写真1 加振前の試験体全景(E-ディフェンス震動台上)】  

  実験後に関しては、データの取りまとめや論文執筆を粛々として参りました。その中で、2017年10月12日には、「ため池堤体の遮水シート工法に関するワークショップin兵庫―E-Defenseを活用した実大加振実験によって分かったことと今後の展望―」を開催し(写真2)、ため池堤体の耐震設計の現状と遮水シート工法により改修された堤体の耐震性について、実験研究から得られた知見をため池管理者や技術者に発信・共有を行い、関心の高さを実感できました。
  以上、話が尽きない感じがございますが、論文の内容とは別に、本受賞に至るまでの研究活動の一端をご紹介させていただきました。

  「あれから、また4年も経ったんだ。」本受賞を機に、これから先の近い将来、この研究成果が社会貢献に結びつき、その頃には同じコメントを発しているのではないかと期待しつつ、地道に努力を重ねていきたいと改めて感じる次第です。
 最後になりますが、E-ディフェンスの実大実験は、皆さんが思った以上に担当者を始めスタッフの負担が大きいと思います。本受賞は非常に光栄に思っておりますが、当然、この実験、この研究ができたのは、共同研究先の担当者や仲間に恵まれたことに加え、実験遂行に関わった方々のご尽力によるところが大きいのは言うまでもありません。この場をお借りして感謝いたします。

 令和元年度地盤工学会論文賞(英文部門)
 Yutaka Sawada, Hiroshi Nakazawa, Tetsuya Oda, Seita Kobayashi, Satoru Shibuya and Toshinori Kawabata: Seismic Performance of Small Earth Dams with Sloping Core Zone and Geosynthetic Clay Liners by Full-Scale Shaking Table Tests, Soils and Foundations, Vol.58, No.3, pp.519-533, 2018.


  ワークショップの様子  
  【写真2 ワークショップの様子】   


             (文責:主幹研究員 中澤 博志)

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ネパールの蛇籠道路擁壁の研究を終えて
 2015年4月、ネパール・ゴルカ地震がおき、同年7月に他機関との合同被害調査を行いました。皆さんは「蛇籠」をご存知でしょうか?もう聞かなくて良いよ、とおっしゃる方もいらっしゃると思います。それだったら嬉しい限りです。
 さて、その蛇籠、日本では布団籠が一般名称ですが、この調査がきっかけで、ある研究が始まりました。ある研究とは、「蛇籠構造物の耐震化」です。この報告では、その研究が一段落した今、区切りとして裏話的な事柄を述べさせていただければと考えています。  
 まずは、研究の一連の経緯について、真面目なお話をします。2015年4月25日に発生したネパール・ゴルカ地震被害調査への参加依頼を受け、延べ10回に渡り、ネパールでの現地調査と研究内容の普及活動を行いました。一連の活動の中で、他機関と連携を行いながら、競争的資金獲得、現地との情報交換や研究協力を行いました。本研究のキーポイントは、以下の三点です。
  • 少なくとも命は守る蛇籠減災技術
    (3L技術-Low tech、Low cost、Local utilization)
  • 蛇籠構造物の設計・施工方法の構築とガイドライン化
  • ジャパンブランドとしての防災技術の提案・実装と開発途上国への国際展開

 上記の目的に向けて、現地調査だけでなく、大型耐震実験施設における蛇籠道路擁壁の耐震強化に関する実大実験、小型模型実験、数値解析、蛇籠金網の要素試験を経て、ネパール現地に耐震強化蛇籠擁壁の試験施工、実装およびモニタリングを行ってきました。その中で、人との出会いが貴重な財産であると感じています。  
 さて、堅い話はともかくですが、これだけのネパール渡航歴がありますので、毎回とは言わないまでも、現地では必ず何かが起こるか、土産話が生まれます。一つ一つ上げるとキリがありませんが、パッと思い出したことの中で、“言える事(言って良いこと?)”のみ挙げさせていただきますね。

a)トリブバン国際空港での出来事  
 山岳地帯ゆえに、世界有数の危険な空港で、ランディングに際し、気流を見てホールディングすることが多いです。到着後はオープンスポットなので、タラップを降り、ボーイング777(TG319)の下を徒歩で通過しターミナルビルに入ります。最初は驚きでしたが間近で見るトリプルセブン!迫力あり(写真1)。また、経験上、遅れると入国審査に手間取り長時間待たされます。ノービザで到着なので、手続きのため、ダッシュでビザの取得に走ります。窓口での費用は、キャッシュで25米ドルか3,000円でも良いと請求されますが、隣の日本のツーリストの方、5,000円を請求されていました。大丈夫でしょうか?(言って良いのかな?)なお、現在、入国方法は変わっているとのことです。
  空港にて  
  【写真1 空港にて】  

b)ご挨拶  
 ネパールの文化では、肯定する際、首を横に振ります。最初は否定されているのかと思いました。真面目な人が多いですが、笑顔が少ない印象もありますね。

c)食事と体調
 写真2の赤いやつ。これが腹痛の犯人ではないか?辛いものがやや苦手な私にとって、この真っ赤な犯人による攻撃的な刺激にやられます。これ、何なんだろう・・・ちなみに、赤いソースをトマトソースと勘違いした同行者の呻き声を聞いたことがあります。日本人好みはモモです。日本のネパール料理店でも必ずありますので是非。

d)バンダ、国境閉鎖と闇ガソリン
 色々ありました。バンダは所謂ゼネストです。外国人は街を歩くと暴行を受けるので19時以降の外出は避けるよう、JICAからの指示がありました。また、国境紛争による燃料供給ストップもありオイルショック状態。ガソリンスタンドから1km以上の駐車の列ができましたが、営業開始まで数日間かかることもあり、車も放置状態でした。ダディン郡という田舎での調査でしたが、沿道の雑貨店ではなぜか、ペットボトルの闇ガソリンが販売されていました。勿論、事前に段取っていますので、購入していません。

e)闇酒  
 AH42号(アジアハイウェイ、通称アラニコハイウェイ)の調査後、煙を見ました。住民の方が集まって何かやっています。何やら、粟を焚いていました。簡単な自作の蒸溜システムによる闇酒販売!500mlペットボトルで日本円にして約100円。好奇心旺盛な同行者が購入し、「おいしくはない」とのこと。でも、まずくもないってこと?この人、異次元だなぁ。勿論、口にしませんでしたし、同行者もハンドル握らなかったですよ、念のため。

f)蛇籠センサー  
 移動中、蛇籠がありそうな場所が分かってくる。その感覚が研ぎ澄まされます。高知大の先生と私でいちいち車をストップするので進まない。ただ、それだけのお話です。

g)歓迎・セレモニー  
 一連の研究活動で、現地説明会とガイドライン配付後、地元の自治体さんより、セレモニーがあり、歓迎されました。この国の方々はお花が好きで、生花を編んでかけてくださいます。写真3は現地での交流の様子です。子供はかわいいですね。

 閑話休題。この一連の活動をきっかけにクラウドファンディングも実施できましたし、貴重な経験を積ませていただきました。震災後の蛇籠道路擁壁に興味を持ち、活動して参りましたが、研究で得たもの以上の数々の経験を積ませていただきました。道路擁壁、ガイドラインの作成をもって取りあえず終えましたが、現在は、豪雨と地震の複合化と河川護岸への新たな適用についての検討を始めています。 最後に、海外貢献は重要ですが、これらの成果は国内の防災機能の強化に最終的につながっていけば思う次第です。真面目なお話がなく、がっかりされた方は、別途、著者までお尋ねください。待ってます。



  食事 現地の交流
  【写真2 食事】  【写真3 現地の交流】


             (文責:主幹研究員 中澤 博志)
 

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