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Published by E-Defense, NIED,January 21,2021 Vol.16 No.4
E-ディフェンス実験報告~地震災害時に病院は機能を維持できるか?~
  防災科学技術研究所 兵庫耐震工学研究センター(E-ディフェンス)では、文部科学省地球観測システム研究開発費補助事業「首都圏を中心としたレジリエンス総合力向上プロジェクト」、サブプロジェクト(c)「非構造部材を含む構造物の崩壊余裕度に関するデータ収集・整備」として、大地震発生時に防災拠点となる重要構造物の振動台実験を実施しています。実験結果は、構造物が機能を維持しているかどうかを迅速に判定し、構造物にどの程度の余力があるかを評価する技術の開発・検証に不可欠なデータとなります。
  本サブプロジェクトの一環として、令和2年12月、京都大学、京都大学医学部附属病院、早稲田大学他との連携で、サブプロジェクト(c) 課題3「災害時重要施設の高機能設備性能評価と機能損失判定」の、災害拠点病院を模した実大規模構造物試験体のE-ディフェンス実験を実施しました。地震災害時、災害拠点病院の構造物が健全でも、医療設備・機器(高機能設備)が損傷して病院機能が大幅に低下するリスクがあるため、本実験により、構造物の耐震余裕度だけではなく、病院がどの程度機能を維持しているのかを評価・検証しました。
  試験体は、高さ約15mの4階建て耐震建物と、高さ約11.5mの3階建て免震建物の2棟の鉄骨造構造物で構成されており、免震装置として球面滑り支承を採用しました。エキスパンションジョイントを介して、2階の渡り廊下で2棟の試験体を連結しました。連結された2棟の実大規模試験体を同時に加振する実験は、世界でも初の試みです。また、間仕切壁で仕切られた各部屋は、それぞれ手術室、透析室、NICUなどを想定して医療機器を配置し、スプリンクラー等の配管、天井、空調、高架水槽他、関連設備を設置しました。加振実験では、兵庫県南部地震における観測波や、南海トラフで発生が予測されている長周期・長継続時間地震動を試験体に加えました。
  実験の結果、1) 2棟の建物は、構造物としての健全性は保たれている、2) 耐震棟内の医療機器は移動・転倒しており、地震中もしくは地震直後の医療活動に支障がある。また、生命維持装置と患者をつなぐ管が抜けることによる二次被害や、転倒した機器の損傷による中長期的な機能喪失の可能性も想定される、3) 一方、免震棟内の医療機器は、わずかに移動した程度であり、その機能を維持できたと考えられることなどが明らかとなりました。ただし、これらの結果は、あくまでも今回の実験条件における結果であり、詳細なデータ分析・解析を経て、様々な条件における被災状況を想定し、病院の事業継続計画(BCP)のブラッシュアップに繋げていく予定です。
  本実験の実施にあたり、所内外の技術者、研究者、病院関係者、事務担当者やマスコミ関係者他、非常に多くの皆様にご参加いただきました。非常に厳しいコロナ禍の中、最後まで感染者を出すことなく、無事に実験を終了することができたのも、皆様のご理解とご協力のおかげです。ここに篤く御礼申し上げます。


試験体全景 手術室
病室
 試験体全景(左),手術室(右上),病室(右下)


                (文責:主任研究員 河又 洋介)

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超高層建物の崩壊までの余裕度を検証するための実験
  2020年10月に実施した5階建て鉄筋コンクリート造建築物の加振実験についてご紹介させていただきます。試験体の外観は写真に示す5階建て鉄筋コンクリート造、実物大レベルの試験体です。試験体の高さ17.6 m、総重量は約650 tonで、試験体の長辺方向1方向加振を行いました。
 本実験は、国土交通省が実施する建築基準整備促進事業における調査番号S30「鉄筋コンクリート造の限界耐力計算における応答変位の算定精度向上に向けた建築物の振動減衰性状の評価方法の検討」に関する事業の一環として、株式会社堀江建築工学研究所、学校法人中部大学、国立大学法人東京大学地震研究所、国立大学法人名古屋大学、国立大学法人山口大学および国立研究開発法人建築研究所と共同で実施させていただきました。
 地震後の機能継続性が強く求められる災害拠点建築物等では、柱や壁などの建物を支える骨組み(構造躯体)の厳密な損傷評価のみならず、非構造部材や設備機器等の変形追従性の観点からも建築物の応答変形が重要な設計クライテリアとなります。建築物に対する限界耐力計算は、国土交通大臣認定を要する時刻歴応答解析を除けば、建築物の地震応答変形を明確に評価できる唯一の構造計算法ですが、算出される応答変形の検証精度には、部材の塑性率から算出される振動減衰性状の評価方法によって、ばらつきが大きいという課題があります。
 基準整備促進事業 調査番号S30では、建築物の安全性を検証する設計手法(限界耐力計算)において、建築物に発生する変形(応答変形)の算定精度を向上させるために、ばらつきの最も大きな要因である部材の降伏点評価法について、新たな評価手法の構築を目指しています。実物大試験体の加振実験を行うことにより、地震入力と降伏変形・振動減衰の関係を明らかにします。建築物の振動減衰を表す数値hの設定に関わる降伏点評価法の検討により建築物の応答変形を精緻に算定する新たな評価手法を構築することで、災害拠点建築物等の設計に重要な設計クライテリアとなる応答変形を精緻に算定することが可能となります。
 2020年は、新型コロナウイルスの世界的なまん延により、4月に日本でも緊急事態宣言が発出されるなど、社会全体が混乱する中、初めての環境に対応しつつ、感染予防を徹底していただいたこともあり、実験準備期間含め感染者を出すことなく実験を行うことができました。ご尽力いただきました多くの実験関係者およびサポートいただいた方々に、この書面をお借りして御礼申し上げます。

試験体全景 試験体全景
試験体全景


               
                (文責:特別研究員 青木 崇)

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