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長周期地震動による被害軽減対策の研究開発

研究概要

首都圏周辺では、直下地震や東海地震などの海溝型巨大地震が想定されます。特に海溝型地震では長周期地震動が発生し、設計想定を大きく上回る地震エネルギーが高層建物に入力される可能性が指摘されています。本研究では、長周期地震動に対して多大な被害の発生が想定される高層建物を対象にし、その耐震性能評価および被害軽減を目的として、以下の項目の研究開発に取り組みます。

 研究項目(@):長周期地震動を受ける高層建物の損傷過程、安全余裕度把握
 研究項目(A):長周期地震動を受ける高層建物の応答低減手法の開発
 研究項目(B):高層建物における非構造部材の損傷・機能損失・修復性評価

本研究成果は、関連する学協会とも共有し、安心・安全な高層建物の実現を目指します。

高層建物の損傷過程解明にかかわる実大実験

本実験では、発生が確実視されている海溝型地震による長周期地震動に初期の高層建物が遭遇した場合、どのように揺れ、どこまで耐え、どのような損傷・破壊・機能低下が発生するかを検証しようとしています。 実験に用いた試験体は、1980年代以前の初期高層建物の平均的な規模の建物(地上21階、高さ80m)を想定していますが、世界最大の震動台・E-ディフェンスといえども、これをそのまま載せることはできません。 そのため、下図に示すように21層モデルを、1階から4階までの4層は実規模とし、その上の中高層階は3層に縮約する7層モデルとしました。すなわち、縮約後の各質点の質量(Me)は集約する5層の各層質量の和として、また縮約層の剛性(Ke)は該当する5層の各層剛性を直列に結合して評価しました。

長周期地震動を受ける高層建物を想定する試験体の設計
下4層を実規模の鉄骨造架構で模擬し、その上は5階分を1枚のコンクリート錘で代用して、これに想定建物と同様の剛性、強度、減衰性を与えるため、積層ゴムとダンパーを組み込んでいます。また、下層の実大鉄骨造架構部分では初期の高層建物で用いられていた柱梁接合部などのディテールの再現を試みました。右写真に試験体の全景を示します。
実験では、耐震設計に標準的に用いられている観測地震動及び東海地震、東海・東南海地震において予測される長周期地震動を入力地震動として用いました。
実大実験モデル
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