第1部 12:55〜13:55
ぜひ使ってほしい、防災科研の新たな情報プロダクツ (講演概要)

清水慎吾

国家レジリエンス研究推進センター

2007年名古屋大学 博士(理学)取得。2006年防災科学技術研究所入所。2012年より現職。第2期SIP線状降水帯観測・予測システム開発のプロジェクトの研究代表者を務める。データ同化手法を活用した短時間降雨予測や客観解析のシステム開発に従事。気象庁線状降水帯予測精度向上ワーキンググループ委員。

災害発生が迫った線状降水帯を予測 ~直前避難の実現を目指す実証実験~

強雨が数時間以上に渡って継続し、河川氾濫や土砂災害等の深刻な被害を引き起こす集中豪雨の発生が近年多発しています。台風を除く集中豪雨の6割以上は線状降水帯によって引き起こされているといわれています。従って、線状降水帯の予測による事前対応は喫緊の課題となっています。しかし、数10kmから100km程度の比較的狭い範囲に数時間のうちに記録的な大雨をもたらす線状降水帯を事前に予測することは、既存の気象観測技術では大変困難となっており、その結果「逃げ遅れ」による被害が多数発生しています。

こうした「逃げ遅れ」を防ぎ、被害を軽減させるために、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「国家レジリエンス(防災・減災)の強化: 線状降水帯の観測・予測システムの開発」において、十分な避難に要する時間、即ち半日前程度に、線状降水帯の発生が見込まれる地域を大まかに特定し、最新水蒸気観測網を整備し、観測データを用いた最新の数値予測手法を用いて、高解像度で高頻度に雨量予測情報を提供することで、線状降水帯が発生する2時間前に、避難区分単位の精度で災害発生地域を絞り込む技術を開発しています。本発表では、開発したシステムの概要と令和元年の佐賀豪雨や令和2年7月豪雨における適用例を紹介します。

上田 英樹

火山防災研究部門

2002年防災科学技術研究所入所。基盤的火山観測網(V-net)の運用と観測データを用いた火山防災に関する研究を実施。2016年より文部科学省の次世代火山研究推進事業において、日本の研究機関・大学・行政機関の火山データをオンラインで共有するJVDNシステム(火山観測データ一元化共有システム)の開発を進めている。

JVDNシステムによる火山データの共有

JVDNシステム(火山観測データ一元化共有システム)は、日本国内の研究機関、大学、行政機関の火山のデータを共有するためのシステムです。データ活用や連携を促進し、火山研究の発展と防災に貢献すること目指しています。

JVDNシステムには、防災科研の基盤的火山観測網(V-net)をはじめとする関係機関の観測点の情報や観測データなどが登録されています。これらは主に火山の研究に利用されるデータですが、国の関係機関が研究や防災対応のために調査した降灰の調査データもこのシステムで共有されます。降灰調査データとは、地面に降り積もった火山灰の厚さや写真などです。もし日本で大規模な火山噴火が起こった場合、広い範囲でライフラインの障害などの火山灰による災害が発生します。影響範囲を把握して、火山灰の除去を行うなどの対応や復旧作業を迅速に行うためには、降灰の情報が必要になります。

大規模な火山噴火による災害は、地震災害や豪雨災害に比べて頻度が低い災害ですが、いつか必ず起こる災害です。火山災害に対しても他の災害と同様、協力してデータと科学的根拠に基づいた予防や対応をとることが必要です。そのためにもJVDNシステムは火山研究や火山防災に欠かすことができないシステムです。

JVDNシステム(火山観測データ一元化共有システム)

鈴木 進吾

災害過程研究部門

2006年京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻博士後期過程認定退学。博士(情報学)。ひょうご震災記念21世紀研究機構人と防災未来センター専任研究員、京都大学防災研究所 助教を経て、2015年より防災科学技術研究所勤務。津波の大規模数値計算技術の開発、市町村向け防災情報サービスプラットフォームのプロトタイプ開発等に従事。災害過程研究部門 副部門長。

あなたの地震後の生活はどうなる?地震10秒診断

防災科研と損保協会では、災害関連データを活用したデジタルコンテンツ「地震10秒診断」を公開しています。地震10秒診断では、いつでも、誰でも、パソコン、スマートフォンからワンタップするだけで、その場所で見舞われる可能性のある揺れと確率、ライフラインの支障日数、建物被害などのシミュレーション結果を知ることができます。

一人ひとりの生活に密着した場所で自ら想定を行うことにより、地震後の状況を自分の生活に即してイメージしやすくし、備えにつなげます。難しかった地震予測データや被害想定データをよりわかりやすく、これまでとは全く異なる、画期的な被害想定です。

場所や、震度などを変えて再診断すれば、気軽に様々な可能性を知ることができます。地震10秒診断、是非お試しいただければと思います。

地震10秒診断(外部サイト)

岩波 越

首都圏レジリエンス研究推進センター

1991年北海道大学大学院理学研究科博士後期課程修了・中退。理学博士。専門はレーダー気象学。同年防災科学技術研究所入所。XバンドMPレーダーの開発導入、国土交通省に技術移転した降雨強度推定手法等の開発、極端気象の観測・予測研究、自治体等との実証実験に従事。国家レジリエンス研究推進センター長兼務。

ソラチェク ~首都圏の雨、風、雷、ひょう、雪をまとめてチェック~

人口が集中する首都圏では、発達した積乱雲によるゲリラ豪雨、突風・竜巻、 落雷、ひょうなどの激しい気象は、たとえ局地的であっても日常生活等に大きな影響を及ぼします。

防災科研では積乱雲の一生を最新技術で独自に観測しています。これらのデータと特許を持つ解析技術等を使って、首都圏の雨、風、雷、ひょうのきめ細かいリアルタイム情報求め、地図に重ねてまとめて見える化したウェブサイト「ソラチェク」を開発し、2020年6月に公開しました。

ソラチェクは、気象情報と東京2020大会競技会場などの社会インフラ情報を重ねて表示することができます。250m間隔で雨や雷の移動が表示できるので、工事現場やスポーツ施設などに近づく危険を知ることができ、屋内への早めの移動などに活用することができます。また、ひょうの推定域は、ひょうで傷ついた農作物の病害発生を防ぐために、農薬散布が必要な場所を知りたい、というニーズに応える情報です。2021年2月からは、大雪の際に、建物やカーポートなどの被害発生の目安となる屋根雪の重量や、道路管理等に役立つ着雪重量等、雪に関する情報を掲載する準備を進めています。

気象情報と皆さんがお持ちのデータを重ねて新しい情報を生み出し、レジリエントな社会の実現に向けて、一緒に課題解決に取り組んでいきませんか。

ソラチェク

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