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センター長挨拶
梶原浩一センター長  防災科研の実大三次元震動破壊実験施設(E−ディフェ ンス) は、運用を開始してから2016年4月で12年を迎えました。E−ディフェンスを稼動し、これまで80課題の実験を、無事故・無災害で実施しました。その成果を、各種メディアを通じて公知とするとともに、研究機関・行政・企業・市民に提供することで、地震防災・減災への貢献に向けた努力を続けています。

 4月1日から防災科研の7年間の中長期計画が、林春男理事長のリーダーシップの下に始まりました。この中長期計画では、その前文に「防災科研は、防災科学技術に関する基礎研究及び基盤的研究開発等の業務を総合的に行うことにより、防災科学技術の水準向上を図ることを目的としている。」の記述があります。
 兵庫耐震工学研究センターを拠点とする、地震減災実験研究部門の研究員とE−ディフェンスの維持管理に当たる職員は、全員がこの計画に沿って年度毎に計画を立て、業務を推進します。

具体的には、以下を今中長期計画で実施します。

1)研究施設の運用促進と維持管理:
効果的・効率的な運用を行うと共に、その安全・ 確実な運用のため、施設・設備・装置等の保守、点検及び整備を着実に実施します。また、共同研究や外部研究機関等への施設貸与によるE−ディフェンスの活用を促進するとともに、実験データを外部研究機関等へ提供します。さらに、関連 する施設・設備・装置等の改善、改良及び性能向上など、地震減災研究に関する研究基盤機能の高度化に取り組みます。

2)E−ディフェンス等研究基盤を活用した研究:
「社会基盤の強靱性の向上を目指した研究開発」をプロジェクトとする、実大三次元震動破壊実験施設等研究基盤を活用した地震減災研究では、E−ディフェンスと大型耐震実験施設を活用して、構造物等の耐震性・対策技術の実証及び評価を実施することにより、地震減災技術の高度化と社会基盤の強靭化に資する研究をシミュレーション技術の開発研究・援用と共に行います。

 工学に専門性の軸足を置く当方の部門・施設では、構造物の性能評価について、その技術の高度化も含み、中低層建物、免震・制振構造、非構造部材、木材を含む新材料、地盤、機器配管、ライフラインを対象として総合的に実施します。また、先導的なイノベーションに結びつく研究・開発を産・学と連携して進めます。建物居室内の安全対策の実証と評価に加え、地震防災・減災に立ち向かうための意識啓発・教育のための可視化と体感システムの構築と普及にも取り組み、実験成果を活用・展開し、レジリエントな社会基盤の構築に貢献していきます。シミュレーション技術の開発では、E−ディフェンスで実施した構造物の地震時の挙動をより高精度に解析する数値シミュレーション技術を構築し、実験の裏付けを導入することにより、従来では不可能であった精緻な崩壊解析を実現し、繰り返し地震などに対する建物の残余耐力の評価にも挑戦します。
 研究推進では、今後想定される首都直下、東海南海トラフ地震等を見据え、建物やライフラインの長時間や繰り返し加震に対する耐震性能の評価・向上は喫緊の課題であると考えます。より高度で合理的な構造物の性能評価手法、次世代型の防災・減災技術、構造物のセンシング技術などの開発・検証が重要です。さらに、建物と基礎・地盤の相互作用、地盤の変状、地震時や地震後の速やかな避難行動など、重要な課題は山積みです。
 将来にその発生が想定される巨大地震の様々な波形再現とそれによる長大構造物の応答再現、人的な行動も含む複合災害の対策研究には、何らかの施設整備と実験における工夫が必要です。震動台の大きさに胡坐をかいただけではこれらの課題への展開は出来ません。そのため、不可欠な機能については施設整備を実施するとともに、アイディアを加えて、現状の震動台の限界を補完した実験研究を進め、強靭な社会の構築に貢献する所存です。

 最後に、E−ディフェンスと大型耐震実験施設を基盤とする研究においては、今後も国内外の様々な分野の研究者と研究機関の横断的な連携が進められ、統合的な防災研究が進展することを懇望する次第です。E−ディフェンスでは、実験の映像、実験データ、プロジェクト成果資料、今後の実験予定、公開実験の案内等を随時、兵庫耐震工学研究センターのホームページで公開します。

謝辞
 E−ディフェンスにおける一連の研究は、文部科学省、国内外研究機関の第一線の研究者、地方自治体の防災関係者、民間企業のご支援、ご協力により推進されております。ここに記して御礼申し上げます。


地震減災実験研究部門 兵庫耐震工学研究センター
梶原 浩一

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