部門紹介

災害過程研究部門

災害から速やかに立ち上がる力を。
その過程に社会科学で切り込む。

災害過程の科学的解明と効果的な災害対応策に関する研究

災害とは単に人命や財産が失われることに留まりません。その本質は「日常性の崩壊」と言われます。災害への備えとは、建物やインフラを強固にすることだけで達成されるわけではありません。私たちの社会の制度や仕組み、組織や個人の能力、あるいは文化として、災害から速やかに立ち上がる力を備える必要があります。
このために、防災科研では、災害発生によって社会にどのような被害が発生し、どのような回復過程をたどるかを、防災実務や災害現場との協働を通じ、科学的に明らかにします。そしてその理解に基づいた効果的な防災対策・防災教育・防災政策の提案を目指します。

災害から速やかに立ち上がる力を。
その過程に社会科学で切り込む。

社会現象としての災害のメカニズムを解明する。

災害とは、建物が壊れたり、人々の生命が奪われたりということではありません。経済活動が止まれば人々のしごとは失われ、住み慣れた町が破壊されることで人々はちりぢりになりコミュニティは崩壊します。そしてそこから避難生活、生活再建の過程、復旧・復興の過程がはじまります。災害を生み出すきっかけは地球の活動であっても、災害とは本質的に社会現象に他なりません。
それでは、災害を減らすにはどうしたらよいのでしょうか。あるいは災害から速やかに社会が立ち上がるためにはどうしたらよいのでしょうか。我々は、そのような疑問に社会の側から解を与えようとしています。そのためには、そもそも災害時に人々はどう行動するのか、被災した社会はどのように反応し、どのような再建過程を遂げるのかのメカニズムを解明しなければなりません。そのような問題意識のもと、災害発生から時間経過とともに変化する一連の社会現象を解明するのが災害過程研究部門です。

災害対策としての共通した「形(かた)」を構築する。

自然災害のほとんどは一定の地域内での現象です。私たちの務めは個々の地域の事象を現地での調査研究活動を通じて読み解くことから、あらゆる災害において共通して起こりうる普遍的な体系、いわば「形(かた)」をつくり出すことです。例えば地震の揺れや水害時の水の振る舞いには一定の法則があるため、そこで人が取るべき防災行動にも基本となる法則が存在するはずです。行政の災害対応にも、一定の法則性があるはずです。そのパターンを解明することで、人や社会の活動の基本となる防災の「形(かた)」を確立し、我が国全体の防災力、防災基礎力を底上げすることを目指しています。

我が国における防災の社会科学を確立するために。

防災というと理学・工学の印象が強いですが、その対策を超えたところで起きるのが災害です。そこからどう立ち直るかの研究が社会科学の役割であり、きちんとした理論と科学的な解明を伴う、学理として確立されたものである必要があります。防災の社会科学はまだまだ我が国では未発達であり、私たちは国立の研究機関として、日本の防災における社会科学の発展をリードしてゆく存在でありたいと思っています。

災害過程研究部門長 永松 伸吾

つくば本所写真
災害過程研究部門研究会の様子

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災害過程研究部門

研究員数

客員研究員数

情報プロダクツ数

活動報告数

研究テーマ

災害過程の科学的解明に関する研究

災害過程の科学的な解明のために、災害過程とそれを規定するレジリエンスの構造をモデル化し、経験的データにより実証するとともに、その知見をもとにレジリエンス評価指標を開発し、地域社会の防災活動の結果を評価する指標として整備する。

効果的な災害対応策に関する研究

様々な防災の実践者らとの協働により、防災課題の解決に向けた効果的な対応策に関するアクションリサーチを行う。具体的には、

  1. 防災課題の理解と同定を支援する。
  2. 目標の設定と対策の検討を支援する。
  3. さらにそれらの解決手順を「型」として定式化する。

総合知による応急対応DXの推進

市町村による避難所運営業務を対象とし、動的な支援システムを開発する。
具体的には、

  1. マルチハザードを対象とし(R4は気象災害に特化)、脆弱性情報からライフラインの被害予測ならびに避難者の予測を行う。
  2. ICSに準拠し実施すべき業務内容をWBSで構造化し、規模の見積、必要な応援規模の推計を行う。
  3. 避難所運営業務の実施状況および現場の状況を記録するCloudEOCを開発する。
  4. CloudEOCの記録を元に次の責任担当期間における業務見積もりを行う。

知の統合基盤の開発と実装モデルの構築/OSS-SRの応急対応DX連携

市町村が実施すべき応急対応業務のうち避難所運営業務を対象に、過去災害における経験や記録情報から知識を抽出し、構造的に整理することで「型」の1事例を構築する。また、ファシリテーション技法を活用し、部局単位での意思決定に対するAARモデルを構築する。

Researchers

研究員紹介

客員研究員(五十音順)

青柳 篤

Kamiya (Thailand) Co.,Ltd. Managing Director

太田 敏一
小田 隆史

国立大学法人東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 准教授

木村 玲欧

兵庫県立大学環境人間学部 教授

越山 健治

関西大学社会安全学部 教授

佐藤 和彦

大正大学 部長兼研究員

島崎 敢

近畿大学生物理工学部人間環境デザイン工学科 准教授

関谷 直也

東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター 准教授

永田 俊光

新潟地方気象台 地域防災官

沼田 宗純

東京大学大学院情報学環・生産技術研究所 准教授

野中 志郎

合同会社 東西回廊研究所 代表

秦 康範

山梨大学大学院総合研究部工学域 准教授

廣井 悠

東京大学大学院 都市情報・安全システム研究室 教授

三浦 勝

インクリメントP株式会社 執行役員本部長

山口 健太郎

株式会社三菱総合研究所 主任研究員
社会構想大学院大学 客員教授
鳥取大学大学院持続性社会創生科学研究科 非常勤講師

災害過程研究部門

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