部門紹介

2023年度災害過程研究部門スタッフ集合写真
災害過程研究部門

災害から速やかに立ち上がる力を。
その過程に社会科学で切り込む。

災害過程の科学的解明による持続的なレジリエンス向上方策に関する研究

災害とは単に人命や財産が失われることに留まりません。その本質は「日常性の崩壊」と言われます。災害への備えとは、建物やインフラを強固にすることだけで達成されるわけではありません。私たちの社会の制度や仕組み、組織や個人の能力、あるいは文化として、災害から速やかに立ち上がる力を備える必要があります。
このために、防災科研では、災害発生によって社会にどのような被害が発生し、どのような回復過程をたどるかを、防災実務や災害現場との協働を通じ、科学的に明らかにします。そしてその理解に基づいた効果的な防災対策・防災教育・防災政策の提案を目指します。

災害から速やかに立ち上がる力を。
その過程に社会科学で切り込む。

社会現象としての災害のメカニズムを解明する。

災害とは、建物が壊れたり、人々の生命が奪われたりということではありません。経済活動が止まれば人々のしごとは失われ、住み慣れた町が破壊されることで人々はちりぢりになりコミュニティは崩壊します。そしてそこから避難生活、生活再建の過程、復旧・復興の過程がはじまります。災害を生み出すきっかけは地球の活動であっても、災害とは本質的に社会現象に他なりません。
それでは、災害を減らすにはどうしたらよいのでしょうか。あるいは災害から速やかに社会が立ち上がるためにはどうしたらよいのでしょうか。我々は、そのような疑問に社会の側から解を与えようとしています。そのためには、そもそも災害時に人々はどう行動するのか、被災した社会はどのように反応し、どのような再建過程を遂げるのかのメカニズムを解明しなければなりません。そのような問題意識のもと、災害発生から時間経過とともに変化する一連の社会現象を解明するのが災害過程研究部門です。

災害対策としての共通した「形(かた)」を構築する。

自然災害のほとんどは一定の地域内での現象です。私たちの務めは個々の地域の事象を現地での調査研究活動を通じて読み解くことから、あらゆる災害において共通して起こりうる普遍的な体系、いわば「形(かた)」をつくり出すことです。例えば地震の揺れや水害時の水の振る舞いには一定の法則があるため、そこで人が取るべき防災行動にも基本となる法則が存在するはずです。行政の災害対応にも、一定の法則性があるはずです。そのパターンを解明することで、人や社会の活動の基本となる防災の「形(かた)」を確立し、我が国全体の防災力、防災基礎力を底上げすることを目指しています。

我が国における防災の社会科学を確立するために。

防災というと理学・工学の印象が強いですが、その対策を超えたところで起きるのが災害です。そこからどう立ち直るかの研究が社会科学の役割であり、きちんとした理論と科学的な解明を伴う、学理として確立されたものである必要があります。防災の社会科学はまだまだ我が国では未発達であり、私たちは国立の研究機関として、日本の防災における社会科学の発展をリードしてゆく存在でありたいと思っています。

災害過程研究部門長 永松 伸吾

つくば本所写真
災害過程研究部門研究会の様子

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災害過程研究部門

研究員数

客員研究員数

情報プロダクツ数

活動報告数

研究プロジェクト

総合知による災害対応DXの推進に関する研究開発

災害発生時、市町村職員は通常業務とは全く異なる大規模、長期的かつ未経験の対応を確実に実施する必要があります。現在、災害対応の標準化が十分でないため、職員や団体間での対応方法の違いが業務の効率性を妨げることもあります。私たちは、人口減少により経験者・職員数が減少した社会で国難災害へ対応しなければならないことを見据え、知識の体系化とデジタル技術の活用による効果的な災害対応体制を構築していきます。本プロジェクトでは、災害対応の実践的データと専門知識を統合し、高度な意思決定支援用シミュレーションの開発と業務プロセスの明確な標準化を進め、これらをクラウドベースのDXシステムとして開発します。このシステムを実地訓練などで活用しながらデータを蓄積し、災害対応能力を着実に強化する持続可能な仕組みを確立します。

意思決定支援のための災害対応シミュレーション技術の研究開発

災害に対する各種対応の意思決定を支援するため、ハザード・リスク情報と自然災害科学、そして応急対応・復旧・復興に関する社会科学的知見を統合したシミュレーション技術を開発します。SIP4D のデータと各種デジタル化された対応情報を活用し、災害の進展予測、必要な作業量、対応策の効果といった具体的な分析を提供できるようにします。これにより、より確実な意思決定をサポートする研究開発を進めていきます。

災害対応と組織間連携の円滑化に向けた業務の構造化と標準化に関する研究開発

災害対応とそれに関わる組織の連携を円滑化するため、国際標準に基づいた研究開発を進めています。具体的には、行政機関の災害対応における組織体制、運営方法、情報管理、実務内容、人材育成、支援体制の標準化に取り組んでいます。それぞれの部署や組織の役割分担や業務遂行の手順を明確にし、限られた資源を効果的に活用することで、すべての関係者が連携して対応できる体制づくりを目指しています。

DXと災害対応記録の充実による災害対応能力の継続的向上に関する研究開発

デジタル技術を活用して災害対応能力を向上させます。具体的には、クラウドシステムを開発して災害対応業務を支援しながら、自動的に災害対応記録を蓄積できるようにします。その蓄積により実際の災害対応や訓練から得られた経験を、災害対応シミュレーション技術開発や災害対応標準化にフィードバックしていきます。このサイクルを通じて、災害対応におけるDX の推進と災害対応能力の継続的な向上を実現します。

災害過程の科学的解明による持続的なレジリエンス向上方策に関する研究開発

災害とは単に人命や財産が失われることに留まらず、その本質は「日常性の崩壊」といわれます。災害への備えとは、建物やインフラを強固にすることだけで達成されるわけではなく、私たちの社会の制度や仕組み、組織や個人の能力、あるいは文化として、災害から速やかに立ち上がる力を備える必要があります。私たちは、災害発生によって社会にどのような被害が発生し、どのような回復過程を辿るかを、防災実務や災害現場との協働を通じ、科学的に明らかにします。そして、その理解に基づいた効果的な防災対策・防災教育・防災政策の提案を目指します。

地域社会の復旧・復興状況の実態解明に関する研究

南海トラフ巨大地震のような未曾有の災害に備えるには、過去に学び、未来に活かすことが重要です。地域社会の迅速かつ持続的な回復に資する知的インフラを構築するために、被災地における生活再建、インフラ復旧、地域経済の再生、コミュニティの再構築などの実態を総合的に調査し、災害発生後における地域社会の復旧・復興の過程とその実態を多面的かつ実証的に解明します。

災害レジリエンスの評価手法に関する研究

地域社会における複雑化・多様化する災害リスクを軽減するためには、自然災害から迅速に回復できる地域社会を構築することが重要です。地域社会が自然災害に対してどの程度「備え」、「耐え」、「回復」し、「適応」できるかを科学的・定量的に明らかにするために、回復力や適応力も包括的に捉えた科学的エビデンスに基づく災害レジリエンスの評価手法を研究開発します。

防災支援人材育成手法に関する研究

複合的・連続的に発生する災害リスクに対し、地域のレジリエンスを支える中核的な人材の役割が期待されています。想定を超える事態への即応性と判断力を持ち、地域コミュニティの要としての役割を担う、かつ、多様な専門性をつなぎ合わせる地域レジリエンスの触媒としての防災支援人材を育成する手法を研究開発します。

防災情報プロダクツYOU@RISKの研究開発

地域コミュニティの防災活動や小中学校の防災教育、または、企業のBCPなどに活用できるさまざまな防災情報プロダクツとしてYOU@RISKを研究開発します。

Researchers

研究員紹介

2023年4月1日現在

客員研究員(五十音順)

2025年4月1日現在

有吉 恭子

吹田市 総務部 危機管理室 室長

井ノ口 宗成

立命館大学 政策科学部 教授

浦川 豪

兵庫県立大学大学院 減災復興政策研究科 教授

小田 隆史

東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 准教授(人文地理学教室)

大月 浩靖

いなべ市役所 防災課 課長補佐

木村 玲欧

兵庫県立大学 環境人間学部 教授

佐藤 慶一

専修大学 ネットワーク情報学部 教授

千葉 洋平

岩手県立大学 宮古短期大学部 経営情報学科 講師

永田 俊光

新潟地方気象台 リスクコミュニケーション推進官

沼田 宗純

東京大学大学院 情報学環・生産技術研究所 准教授

藤原 宏之

伊勢市役所 危機管理課 主査

松川 杏寧

兵庫県立大学大学院 減災復興政策研究科 准教授

丸山 喜久

千葉大学大学院 工学研究院 教授

山崎 文雄

千葉大学 名誉教授

社会防災研究領域 災害過程研究部門

〒305-0006 茨城県つくば市天王台3-1